「女性は話が長い」と女性蔑視の発言をした森喜朗五輪・パラリンピック組織委員会会長が辞任表明したが、振り返れば、森氏はこれまで数々の女性へ放言を繰り返してきた。因縁のあった女性たちはいま何を思うのか。
現職のJOC(日本オリンピック委員会)理事である山口香氏は新聞各紙の取材で、「東京五輪や日本のスポーツ界は多様性の順守に取り組んでいると思っていたが、一言ですべてが否定された」と発言。本誌・週刊ポストが改めて取材を申し込むと、「新聞で言ったことがすべてです」と回答した。
森氏発言で「今までの倍時間がかかる」と槍玉に挙げられたラグビー協会で理事を務める谷口真由美氏はこう言う。
「今回の森さんの発言にはファクトがない。私は2019年から理事を務めていますが、会議時間が倍になったことはありません。ラグビー協会で女性理事が増えたのは森さんの退任後で、私は理事会で一度もお目にかかっていない。
いま協会では会議のやり方を変え、時間をかけて議論しています。女性に限らず、どんな立場の人も言うべきことを発言するのは森さんの言う『競争心』ではなく責任感からです」
同じく同協会理事で昭和女子大特命教授の稲沢裕子氏は、「今回の問題はなぜジェンダーギャップの解消が必要なのかを考えるきっかけになった」とメディアで発言している。
政界にも、森氏と因縁浅からぬ女性は多い。滋賀県知事時代の2007年、新幹線の新駅建設を中断したことで森氏に「あぁ、女の人だなぁ。やっぱり視野が狭いなあ」と批判された嘉田由紀子・参院議員が語る。
「あの方はずっと、古典的な『女はこうだ、男はこうだ』という差別意識をもっていらっしゃると思います。私としては、国としての品格が疑われてしまうので、もっと早い段階で森さんは身を退かれたほうがいいと思っていました。
萩生田文科大臣と橋本五輪担当大臣に宛てて、大臣として公正な決断をするよう求める要請文を出しました」
2009年衆院選挙で民主党の刺客候補として森氏の地盤・石川2区に送り込まれた元衆院議員で現・金沢市議の田中美絵子氏は地元での姿をこう語る。
「客観的な事実を一つ申し上げたいのは、元総理とは現職時代よく公式行事でご一緒しましたが、通常2~3分程度の来賓挨拶の際にいつもご本人だけ30分以上挨拶をされていたということです」
「話が長い」のは森氏自身なのだ。