2月13日深夜に発生した地震は、津波こそ発生しなかったものの、交通機関を中心に大きな被害が発生。10年前の東日本大震災の記憶を揺り起こされた人も多かったはずだ。
もう二度とあのような悪夢が繰り返されるのはまっぴらごめんだが、政府の発表によれば、「南海トラフ地震」は30年以内の発生確率が70%以上とされている。さらに、それに連動する形で「相模トラフ地震」が立て続けに起き、「スーパー南海地震」となる可能性も指摘されている。もしも、史上最悪の巨大地震がやってきた場合、どんな被害が出るのか、シミュレーションした。
わずか8分で34m級の大津波
×月×日、東京・新宿。穏やかに晴れた日曜日の午後、JR新宿駅前は多くの人で賑わっている。次の瞬間、各々のスマホから一斉に緊急地震速報の警報音が鳴り響いた。直後、大きな揺れが発生する。
転倒するほどではないものの、怯えた表情で地面に手をついている人もいる。数十秒続いた揺れがようやく収まった頃、新宿アルタの大型ビジョンに、地震関連のニュースが流れ始めた。和歌山県南方沖を震源とする、マグニチュード8.5の南海トラフ地震が発生。東海や近畿、四国では震度7が観測されたというのだ。
和歌山市内ではビルの窓ガラスが割れ、逃げまどう歩行者の姿や、街灯が激しく揺れる様が映し出される。アナウンサーはこわばった表情で、「津波への警戒」を呼びかけている。しばらくするとカメラが切り替わり、静岡県の沿岸部に津波が迫って来る映像になった。高さ30m近い真っ黒な津波が市街地を襲い、ビルを丸ごとのみ込んでいく。
「東日本大震災では、津波の高さは最大で16.7mでした。しかし南海トラフ地震の場合、静岡県では津波の高さが最大30mを超えると予想される地域もあります。これは一般的なビルの8~9階分の高さに相当します。浸水面積は東日本大震災の倍近く、1000平方キロメートルを超えます。これは東京23区の面積の約1.6倍もの地域が浸水すると考えられます」(名城大学特任教授の川崎浩司さん)
浜松市、静岡市、焼津市などの沿岸部の都市はほぼ全域が浸水し、静岡県内だけで約32万棟が被害を受ける。7万人を超える死者が出ることが想定されている。
「政府が発表している津波の想定のなかには、高知県の黒潮町に、地震発生後わずか8分で最大34mの津波が襲うとのシナリオもあります。ただ、震源によっては、静岡県、和歌山県、徳島県などは、もっと早く津波が到達する可能性もあります」(前出・川崎さん)