長引くコロナ禍によって、仕事の求人数は大きく減少している。これまで業績が好調だった企業でさえ、一気に求人をストップしたり、早期退職制度の募集をかけたりするなど、“人減らし”に躍起になっている。だが、そんなコロナ不況下だからこそ求人を増やしている職種もある。働く主婦の調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長兼「ヒトラボ」編集長の川上敬太郎氏がレポートする。
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厚生労働省が発表した一般職業紹介状況によると、2020年12月の有効求人倍率は1.06。辛うじて1倍を超えてはいるものの、1.6前後あったコロナ禍前と比較すると大きく悪化したままだ。
一般職業紹介状況の職業別有効求人数を見ると、2020年12月の「職業計」は前年同月比で78.8%。2割以上も求人が少ない。
求人数の前年同月比を職業分類別に並べると、前年より増加しているのは、もとより人手不足感が強くオリンピック需要も影響していると考えられる「建設・採掘の職業」のみ。他はすべて前年割れしている(別掲表参照)。
中でも最も減少しているのが「事務的職業」で69.1%。減少幅は前年比3割以上にもなる。
「事務的職業」の内訳を見てみると、「一般事務の職業」69.4%、「事務用機器操作の職業」67.8%など軒並み前年比7割未満。経理知識など専門性が問われ、比較的需要が高いと推察される「会計事務の職業」のみ79.6%と7割を超えているが、それでも8割に届かない。
もともと需要が伸び悩んでいた業種も
求人が減少している共通要因はコロナ禍であることは間違いないが、個別に異なる要因もある。コロナ禍との関わりを軸に大まかに分けると、次の3つのパターンに整理される。
(1)コロナで直接ダメージを受けた「産業」
副業解禁や出向推進で話題となっているANAなど、航空業界はコロナ禍の影響が直撃して最も苦しんでいる産業の一つだ。他にも入国制限の影響を受けた観光業界やホテル・旅館業界、飲食業界、アパレル、百貨店などの小売業界も厳しい状況にある。
コロナ禍発生までは業績が堅調、あるいは増収増益を続けていたとしても、未曽有の危機による社会構造の変化の影響を受けてしまうと、企業努力だけで対処できることには限界がある。
飲食店のように全国各地で多店舗展開しているような業態の場合、店舗を閉じる度にまとまった数の余剰人員が生まれてしまうこととなり、これまで貢献してくれた社員やアルバイトなどを解雇せざるを得ないケースも発生してしまう。そのような状況では、新たな求人を出すどころではない。
(2)コロナ前から業績が伸び悩んでいた「企業」
産業の種類にかかわらず、コロナ禍発生前から業績不振に陥っていた企業もある。産業全体ではそこまでコロナの影響を受けていないはずなのに早期退職のような人員削減策を打ち出した企業などは、コロナ前から不調だった可能性がある。
また、業績不振とまではいかないまでも伸び悩んでおり、これから盛り返そうという矢先にコロナ禍に見舞われた企業もある。伸び悩みの状況を打開するために思い切った投資を行った直後にコロナ禍が発生した場合など、大きく算段が狂ってしまったはずだ。
もとから業績不振であれば求人も控えていたはずだが、伸び悩む中でリカバリーしようと計画していた企業の場合、先行投資としてコロナ前に積極的に求人を出していた可能性がある。それがコロナ禍で一気に求人をストップした場合、コロナ前との落差がより大きくなってしまう。