《時間の無駄だとわかっていても、私たちはスマホを手放すことができない。ソファに座ってテレビのニュースを観ていても、手が勝手にスマホに向かう。ポケットからスマホを取り出すたびに、自分の意思で取り出したと思っているならそれは大間違いだ》
これはスウェーデン出身の精神科医・アンデシュ・ハンセン氏が『スマホ脳』(新潮新書)で記した一節。スマホをはじめとしたデジタル端末の持つ人体への影響について言及した同書は、世界13か国で翻訳され、大ベストセラーになっている。
初のデジタル改革担当大臣が誕生し、公立小中学校の全生徒にタブレット端末が配布される計画も進行中。コロナ禍でデジタル接触時間も伸びるいまこそ、海の向こうからの警告に耳を傾けたい。
ドーパミンは新しい情報が好き
スマホは私たちの最新のドラッグである──。センセーショナルな言葉とともにハンセン氏がまず指摘するのはスマホが持つ強い依存性だ。ハンセン氏によれば私たちは1日に2600回以上スマホを触り、平均して10分に1度スマホを手に取っている。ほぼ一日中、いかなるときもスマホを手放せない状況といっても過言ではない。
「スマホ依存」の危険性は日本でも再三にわたって指摘されている。特に車や自転車を運転しながらメールやSNSの返信をする「ながらスマホ」に伴う事件や事故は社会的な問題となっており、その件数はここ5年で1.4倍増加している。