とある有名な占い師が書籍を出版した。その本では、ルールにのっとって計算し、自身が生まれた西暦が偶数になるか、奇数になるかで運勢をみるという占いが紹介されているのだが、出版した直後から、「自分は偶数なのか奇数なのか、わからないので教えてほしい」との問い合わせが1日100件以上寄せられたという。これは毎年のことで、問い合わせ数は年間1万件以上にものぼる。驚くべきは、差出人が小さな子供とは限らず、中年女性も多いというのだ。
この事実が当の占い師からSNSで発信されると、インターネット上では「偶数、奇数がわからない人がいるなんて」と大きな話題となった。
「勉強不足では?」と思うかもしれないが、そう考えたあなたは、次の問いに答えられるだろうか。
2013年に日本数学会が大学生を対象に実施した問題の1つで、中学3年生レベルの難易度だ。
《偶数と奇数を足すと、答えはどうなるでしょうか。次の選択肢のうち正しいものに〇を記入し、そうなる理由を説明してください。
(1)いつも必ず偶数になる
(2)いつも必ず奇数になる
(3) 奇数になることも偶数になることもある》
答えは(2)だが、偶数を「2m」、奇数を「2n+1」と表し、「理由」まで正しく証明できたのは19.1%だった。「偶数、奇数がわからないなんて」と驚いていた人たちも、その理由を正しく解答できるかというと、そうでもないということだ。
「偶数、奇数」は小学5年生の算数で学ぶ。個別指導塾TESTEA塾長の繁田和貴さんが解説する。
「5年生であれば、『奇数+奇数=偶数』『奇数+偶数=奇数』だということも学んでいきます。もっと単純に、“仲よく平等に2つに分けられるのが偶数”“平等に2つに分けられないのが奇数”という認識であれば、小学1年生であっても理解可能です。『キャンディーが5つあります。2人で仲よく分けられますか? 4つの場合なら? 7つなら?』と順番に尋ねていけば、2桁以上の大きな数字になっても、ほぼ全員が理解できます」
ではなぜ、偶数、奇数が見分けられなくなる人がいるのだろう。背景には、意外にもさまざまな理由があった。