俳優の松坂桃李が主演を務める映画『あの頃。』(2月19日公開)が各方面で話題を呼んでいる。“アイドルオタク”というニッチなテーマが中心の本作だが、ジャンルを超えて好評を博しているようだ。原作者に松坂桃李の素顔と映画の見どころについて話を訊いた。
映画『あの頃。』は、漫画家でミュージシャンの劔樹人(つるぎ・みきと)が2014年に刊行した自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』(イースト・プレス)を原作とした青春物語。舞台は2000年代初頭、当時大ブームを巻き起こしていたハロー!プロジェクトのアイドルに魅せられた主人公たちの出会いと別れを描く。
原作コミックエッセイはモーニング娘。をはじめとした“ハロプロ”のファンやいわゆるサブカルチャー界隈で評判を呼び、映画化が発表されると一時的にネット通販で在庫切れとなる事態も発生。「泣いた」「笑った」「懐かしかった」といったコメントが読者から寄せられたほか、絶賛する著名人も相次いだ。
映画化に際しては、『愛がなんだ』(2019)や『mellow』(2020)などでリアルな人間関係の機微を描いてきた今泉力哉が監督を担当。日本アカデミー賞を受賞した俳優・松坂桃李が主人公を演じるほか、仲野太賀や山中崇ら実力派俳優が多数出演する。
さらに映画監督として多数の独創的な作品を世に送り出してきた冨永昌敬が脚本を手がけ、新世代のミュージシャンとして注目を集める音楽家・長谷川白紙が劇伴を担当。“アイドルオタク”というテーマからすると異色とも思える製作陣が多数参加した、豪華なラインナップとなっている。
そんな映画の見どころはどこにあるのだろうか。2000年代という、ひと昔以上前の“アイドルオタク”のリアルな日々を描いた原作コミックエッセイの作者である劔氏はこう言う。
「原作は、1話完結のバラバラのエピソードを中心に構成されています。それをひとつの物語として2時間にまとめた冨永昌敬さんの脚本に、まず驚きました。しかも原作で伝えたかったことや、自分の好きな部分を失っていないので、原作者としてとても感謝しています」