今では多くの繁華街で禁止されている路上での客引き、いわゆるキャッチの誘いに乗って飲食店を利用すると、出てくる料理のレベルが低すぎたり、高額な請求をされるなど満足できないのが普通のことだった。さすがに新型コロナウイルスの感染対策のために飲食店が時短営業や休業をするようになると、キャッチの姿も消えていたが、最近になって東京近郊の街では、今までとはちょっと違うキャッチ行為が行われているらしい。ライターの森鷹久氏が、コロナ以前と何が違うキャッチなのかについてレポートする。
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「うちは飲めますよ! すぐご案内できますので!」
金髪、小柄な若い男が声を張り上げているその場所は、千葉県某市の繁華街。
一都三県をはじめ、大都市を擁する自治体は「緊急事態宣言」発令の真っ只中で、時刻は夜10時過ぎ。ほとんどの飲食店が時短営業要請に従いのれんを下げている。しかし、いつもより薄暗くなったその通りには、前出の金髪男のような「違法キャッチ」がそこら中に立っていた。そして、道ゆく人に手当たり次第、声をかけまくっているのである。
付近の飲食店店主が言う。
「この辺は小さな店も多く、1日6万円の協力金があるなら喜んで夜8時で営業切り上げるよって感じ。うちなんか完全に閉めちゃってるくらいだけど、飲みたいお客さんっているんだよね」(飲食店店主)
筆者は以前、条例によって客への呼びかけや声かけが規制されているにもかかわらず、路上に立ち続けるキャッチの存在、そしてキャッチが連れていくのはどんな店なのかについてレポートした。そこは、ほとんどが「プチぼったくり」と呼ばれる店で、ぼったくりに「プチ」とつけているのは、少しずつ割高なものを積み重ねて客に請求する、というシステムがあったからである。
生ビールは水のよう、お通しはなぜか800円もする、料理がメニューにある写真と比較してあまりにも貧相で、さらに席料やサービス料、週末料など訳のわからない追加料金が上乗せされ、2人で少し飲んだだけなのに2万円近くする、といった塩梅だ。一人に何十万円も請求するという分かりやすいぼったくりではなく、少しずつ割高なものを積み重ねて、料理の内容などサービスに見合わない高めの請求をする「プチ」ぼったくりというのが、キャッチが連れて行く店の正体だった。