スウェーデン出身の精神科医・アンデシュ・ハンセン氏の著書『スマホ脳』(新潮新書)が、世界13か国で翻訳され、大ベストセラーになっている。
スマホなどのデジタル端末による、人体への影響について書かれたこの本。ハンセン氏によれば私たちは1日に2600回以上スマホを触り、平均して10分に1度スマホを手に取っているという。ほぼ一日中、いかなるときもスマホを手放せない状況といっても過言ではない。
そんな「スマホ依存」とも呼べるような状態となった場合、記憶力が低下したり、集中力がなくなったりする可能性も指摘されている。脳への悪影響があるかもしれないと考えると、スマホが急に恐ろしく見えてくる。しかし、すでに生活必需品となったスマホをまったく使わずに生きていくことは不可能だ。
では、「スマホ脳」に陥らないためにはどうしたらいいのか。『最新研究が明らかにした衝撃の事実 スマホが脳を「破壊」する』(集英社新書)などの著書がある東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太さんは、子供にスマホを持たせる場合、現実的なルールを作ることを提案する。
「親の生活にも深く入り込んでいるものを子供からいきなり取り上げるのは無理な話。勉強するときや睡眠時には電源を切って自室以外の部屋に置き、それが守れないならば使わせないなど、明確な決まり事を作るのがいいでしょう」(川島さん)
また、スマホにはいろいろな便利機能がついているが、例えば時計機能はスマホに頼らず、腕時計や目覚まし時計を利用することでもデジタル・デトックスできる。
これらと並行して取り組みたいのが生活習慣の改善だ。ハンセン氏は「毎日6分運動をしている子供は記憶力や集中力、情報処理能力が高まる」という研究の例を紹介し、ヨガや散歩、ジョギングなど軽い運動を推奨している。認知症の専門医で「もの忘れ外来」を開設する奥村歩さんはこう語る。
「普段運動し慣れていない人は五感で季節を感じる散歩から始めてみてほしい。自分が昔、通っていた小学校の近くを通るなど思い出の場所をルートに入れることも、記憶がよみがえりやすくなるので有用です」