国民の怒りを恐れる菅義偉・首相は、選挙を衆院議員の任期満了が近い9月まで引き延ばすとみられているが、国民はそれまで待つ必要はない。「落選運動」なら今すぐ始めることができる。憲法学者の上脇博之・神戸学院大学法学部教授が指摘する。
「落選運動とは、政治家の問題ある言動を取り上げて“こういう人は次の選挙で落選させよう”と国民に伝える表現活動であり、憲法で保障されている言論、表現の自由に含まれる。特定の候補者を当選させる目的で行なわれる選挙運動にはあたらないので、誰でも、いつでも行なうことができます」
政治を変えるために国民ができる“究極の実力行使”なのだ。
とはいえ、議院内閣制の日本では、総理大臣は衆参それぞれの投票で指名され、国民が直接投票で選ぶことはできない。自民党が衆参で多数を握る現状では、自民党総裁選が事実上の首相選びになる。
ならば、コロナ危機のさなかに総裁選で選ばれた菅義偉・首相が国民の期待を裏切った以上、菅氏を担いだ議員たちは連帯責任を負う。その議員たちも、国民による落選運動の対象となりうるのだ。
「自民党総裁選は派閥の多数派工作で勝敗が決まるが、昨年は細田派、竹下派、麻生派、二階派、石原派と主要派閥がすべて菅氏を担ぎ、各派が推薦人を送り込んでいる」(政治評論家・小林吉弥氏)
菅首相の総裁選の「推薦人」は20人。そのうち14人が衆院議員(吉川貴盛氏は昨年12月に議員辞職)、6人が参院議員だ。
有力な総裁候補の推薦人には、各派閥の「閣僚候補」が名前を連ねることが多い。菅氏の推薦人たちも論功行賞で菅政権で内閣や党のポストを与えられた。
麻生派の河野太郎・行革相(ワクチン担当相)は4回目の入閣、石原派の坂本哲志・一億総活躍相、二階派の平沢勝栄・復興相は念願の初入閣を果たしている。