日本発の新型コロナウイルスに対する遺伝子組換え生ワクチンの開発が進んでいる。痘瘡(とうそう)ワクチンに利用されるワクシニアウイルスを、さらに弱毒化したDIs株に、新型コロナのスパイクタンパクの遺伝子を組み込んだもの。動物に対する投与では短期間に中和抗体と細胞性免疫ができ、免疫効果も持続することが確認された。今年中にはヒトに対しての治験が開始される予定だ。
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ワクシニアウイルスは痘瘡ワクチンとして200年にわたり全世界で使用され、天然痘の撲滅に寄与してきた。ワクチンの安全性を高めるため、改良が行なわれ、1961年には弱毒化されたワクシニアウイルスのDIsという株が日本で開発。それをベクター(運び屋)として新型コロナウイルスのスパイクタンパク遺伝子を組み込んだものが、現在開発中の遺伝子組換え生ワクチンである。
開発を行なっている、東京都医学総合研究所の小原道法特任研究員に話を聞いた。
「新型コロナ感染で亡くなられた患者の中に、脾臓(ひぞう)で作られる強力な抗体の形成が不完全な例が多くみられました。これは高病原性鳥インフルエンザに感染したカニクイザルと同様の所見です。そこでヒトへの感染が確認されたH5N1高病原性鳥インフルエンザに対し、ワクシニアウイルスを使ったワクチン開発に取り組んだのです。その高病原性鳥インフルエンザ遺伝子組換え生ワクチンをカニクイザルに投与したところ、1週間で特定のウイルスを不活性化させる中和抗体が産生しました。さらにT細胞を活性化し、細胞内に入ったウイルスを攻撃して増殖を抑制する細胞性免疫も確認できたのです」
マウス実験ではH5N1高病原性鳥インフルエンザ生ワクチンを接種後の20か月のマウスにウイルスを感染させると100%生存。ワクチンを接種しなかったマウス群はすべて死亡。マウスの寿命は約20か月といわれており、終生免疫を獲得した可能性がある。