中国がコロナ禍の混乱の隙を突くように日本の領海への侵入を繰り返し、東シナ海の緊張が高まっている。
中国海警局の船舶は昨年1年間のうち333日間、尖閣諸島の日本領海に接する「接続水域」を航行し、そのうち29日間は領海に侵入した。
今年2月1日に中国政府が海警局に武器使用権限を与える海警法を施行し、海警局を「第2の海軍」化すると行動はさらに活発化する。2月16日には海警船2隻が日本領海に侵入、尖閣周辺で操業していた日本漁船に接近し威圧行動を取った。
そうした中国の海洋進出強化には日本より欧米が警戒を強めている。中国の香港での民主化運動弾圧に厳しい姿勢を取る英国は、最新鋭空母「クイーンエリザベス」を中心とする空母打撃群を沖縄など日本近海に派遣し、中国を牽制すると報じられた。
フランス海軍のフリゲートは2月19日に米国海軍、海上自衛隊の補給艦と共同訓練を行なった。5月には日米仏の艦船と陸上部隊が南西諸島の無人島で共同の「上陸訓練」を行なう予定だ。23日には米国防総省が「(領海侵入を)やめるよう求める」と言明した。欧米が中国封じ込めに動き出し、尖閣がその“最前線”になっている。
海洋問題研究者の山田吉彦・東海大学海洋学部教授は尖閣危機のレベルが上がったと指摘する。
「中国の海警法のターゲットは日本の尖閣諸島です。中国はベトナムやフィリピンとの間で領土問題がある南シナ海の南沙諸島には人工島を建設し、法律がなくても力ずくで不法占拠した。しかし、尖閣は力だけでは奪い取れない。だから法と秩序を前面に出す日本に対して、中国はまず国内法を整備する方法を取った。いわゆる法律戦です。
海警法では侵入する日本漁船や海上保安庁の船をどんな手段を使っても排除できることになっている。世界に対し、あくまで国内法の“法と秩序”に基づいて自国領土を守るため実力行使をするのだという口実を整えた」