国内

『サザエさん』『鬼滅の刃』の炎上騒ぎとネット報道を考える

ネットで議論を呼ぶきっかけは様々(イメージ)

ネットで議論を呼ぶきっかけは様々(イメージ)

 多くの人の目に触れる人気コンテンツほど、様々な感想にさらされやすい。とくにSNSでは、それがたとえきわめて少数派のネガティブな意見だったとしても、大きな勢いを持っているかのように見えてしまうこともある。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、『サザエさん』『鬼滅の刃』の炎上騒ぎと、それを報じたネットニュースについて考察する。

 * * *
 作品が作られた当時の時代性と現代の時代性の齟齬をどうすべきか、といった議論は常に起きる。2月21日に放送された『サザエさん』(フジテレビ系)ではカツオから女に生まれて良かったかを聞かれた母・フネが、「良妻賢母で愛嬌が良くって切り盛りうまくて、お料理が上手でおまけにお裁縫が上手。こんな母さん男にしたらもったいないよ」と回答。

 これに対して「時代錯誤だ」などの意見が書き込まれた。この手の件については、何件かの批判的コメントを見つけたネットニュースの記者が「〇〇(作品名)の××という発言で賛否両論(炎上)」と報じた結果、その後実際にネットで大激論になることが多い。ただ、大多数の意見は「そんなことにいちいち目くじらを立てるな」というものではあるが、「賛否両論」「炎上」というキーワードとその作品が紐づけられた結果、数字の上では本当に炎上したことになってしまう。

 人気アニメ『鬼滅の刃』の新シリーズ『遊郭編』をめぐっても同様の事態に。「遊郭」という言葉が子供向けアニメにはそぐわないと意見する人もいた。これを受け、東スポウェブが「鬼滅の刃新作めぐる議論で『炎上騒ぎ』がトレンド入り 森喜朗“失言”の影響も」と報じ、デイリースポーツが〈鬼滅 次回作「遊郭編」で炎上騒ぎ…論争「遊郭を子供に」「女性差別」「過剰反応」〉と報じた。

 ところがその後J-CASTニュースが検証した結果、これらの記事が出る前は〈2月14日~19日の期間、「鬼滅」「遊郭」を含んだツイート約34万件を感情分析すると、ポジティブな反応が25.2%、中立が70.9%、ネガティブが3.8%だった〉とのことだ。よって「炎上騒ぎ」は起こっていないのに、2つのサイトが焚火にガソリンぶっかけて炎上させただけだ。まさにマッチポンプ型の記事制作方法である。そして、これらの記事、アクセスいいんだよ。腹立たしいことにさ。

 さて、『サザエさん』だが、リテラシーの高い層はいちいち目くじらは立てず「時代劇」として捉えている。何しろ三世代同居など珍しいし、黒電話がある家などもはやない。波平とフネのように自宅で着物を着る父母などどこにいる? 番組開始の1969年にはすでに「核家族」という言葉は存在していたため、『サザエさん』の世界観は当時から「1950年代の古き良き日本」的な面はある。

関連記事

トピックス

渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》週刊ポストが1年前に託された最後のメッセージ「私の人生は野球に始まり、これからも常に野球とともにあります」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
「秀才」に突然訪れた“異変”の原因とは(イメージ)
中受で超難関中高一貫校に入学した「秀才」に突然訪れた“異変”の原因とは「腹痛と下痢を繰り返し、成績は最下位クラス…」《エリートたちの発達障害》
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン