消費者庁が、新型コロナウイルスのワクチン接種に便乗して官庁になりすまし、ワクチン接種のために必要だと金銭や個人情報をだまし取ろうとする電話が相次いでいると注意喚起を行っている。オレオレ詐欺を彷彿とさせるこの犯罪は、やはり同じ系統の詐欺グループが関与しているようだ。特殊詐欺に詳しいライターの森鷹久氏が、ワクチン詐欺で狙われるのは、どんな人たちなのかについてレポートする。
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「詐欺師」たちが狙うのは、絶望の淵に立ち、今にも命を投げ出さんばかりの、追い込まれた人たちではない。そんな人たちを狙ったところで、詐欺師たちが得をすることは何もないだけでなく、後味も悪いからだ。
「狙うのは一言で言えば『欲深い人』。欲と言うのは、持たざる人より持っている人の方が強い。欲深い人から盗るのは、心もそれほど痛みません」
こう話すのは、かつて特殊詐欺の指示役として活動し、6年前に「老夫婦から350万円を騙し取った」として、実行役の「受け子」が逮捕されたのちに自身も検挙されたという末永良平氏(仮名・30代)。実は末永氏本人も、元々は「持たざる者」であったことを告白しつつ、特殊詐欺がなくならないどころか、今後さらに増えていくし、コロナ禍によりその機運が高まりを見せていると考える理由を説明する。
「私の詐欺の原点はリフォーム詐欺でした。片親で、地元の底辺高校をなんとか卒業したものの、仕事もせずプラプラしていた時、地元の繋がりで先輩の仕事を手伝い始めたのが最初です。当時は仕事がまさか詐欺だとは思っておらず、先輩からも年寄りのためになる仕事だと説明され、疑いもしませんでした」
末永氏が手を染めていたのは、高齢者宅に必要のない、もしくは効果の疑わしい「床下換気扇」を設置させ、実際にかかった商品代や工事費よりも大幅に高い額の請求を行うというもの。当時は同じような会社が関東や関西に林立し、関係者が逮捕されニュースになることもあった。
報道を見た末永さんは、仕事について当然、疑念を抱くことになる。何より、両親が離婚し父親に引き取られた後、小学校から高校時代まで、末永さんの面倒を見てくれたのは祖母である。祖母と同じくらいの年齢の高齢者を騙し続けることは耐えられなかった。そんな時、詐欺の仕事に誘ってくれた先輩は、いつも次のように繰り返した。