国会を揺るがす菅首相の長男による官僚接待問題では、霞が関からこんな声が上がる。「首相は人事で官僚を支配する。長男に誘われたら、断われないだろう」──それによって、首相に近しい人物が国を動かす力を持ち得てしまう。
菅首相を取り巻く「ネポティズム(縁故主義)」の根深さ──文化人にとって文化勲章に次ぐ栄誉とされる「文化功労者」の選出をめぐり、さらなる問題が発覚した。ノンフィクション作家で『菅義偉の正体』著者の森功氏がレポートする(文中敬称略)。
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選出理由は「ペア碁」
〈ペア碁創案者の滝久雄 日本ペア碁協会名誉会長がこのたび、長年にわたりペア碁の普及、パブリックアートの普及(中略)など文化・芸術活動に多大な貢献を果たしたとして、2020年度(令和2年度)の文化功労者に選ばれました〉
昨年10月27日付の日本ペア碁協会サイトには、本人が満面の笑みを浮かべてそう記している。毎年11月3日の文化の日を前に、文化勲章の受章者と文化功労者が選ばれる。その栄誉に輝いたのだから喜ぶのはさもありなんだ。が、永田町や霞が関ではそこに首を傾げる向きも少なくない。
大手グルメサイト「ぐるなび」会長の滝は公益財団法人・日本ペア碁協会の名誉会長として普及に貢献したという。その選考への疑問もさることながら、政官界で疑問視される理由は別にある。首相の菅義偉、そしていままさに官僚接待問題の主役となっている菅の長男・正剛との距離感だ。
「Go Toイート」の受託事業者であるぐるなび会長と首相とは、菅が横浜市会議員だった頃からの付き合いで、滝の関連企業が菅側に献金もしてきた。滝が主催する囲碁大会をテレビ放映してきた東北新社の「囲碁・将棋チャンネル」は、正剛が取締役となっている。
「ペア碁大会ではイベント協賛企業から年間ざっと3億5000万円のスポンサー料が集まり、東北新社が番組を流してビジネスにしてきた。滝さんは東北新社や菅さんの息子にそれだけ気を遣ってきた。切っても切れない関係でしょうね」
ある囲碁関係者はそう打ち明ける。男女のカップルが交互に石を置いて対局するペア碁の発案者である滝は、それだけでなく「ぐるなび杯」などの冠スポンサーとして囲碁イベントを主催。ペア碁の大会の表彰式に官房長官時代の菅が駆け付けていたのは週刊ポストの前号で報じた通りだ。