この1年ほどで、背中より大きな断熱デリバリーバッグを背負った配達員が街を縦横無尽に走り回る様子は日常の風景となった。バッグにはそれぞれのサービス会社のロゴがプリントされたものがあり、デリバリー会社がどこなのか一目で分かることは利用者の安心感を強める一方、会社名も配達員の名前もない場合もあり、それが時にトラブルの元になることもある。また、ロゴ入りバッグのために、言いがかりでしかない災難に見舞われることもある。俳人で著作家の日野百草氏が、ロゴがプリントされたデリバリーバッグをめぐる配達員たちの実態についてレポートする。
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「どこの配達員かなんてわかりませんから、泣き寝入りしかないです」
新宿区の幹線道路、ドアミラーをボッキリ折られたという女性のメール。パーキングメーターに駐車して、戻ってくる間に折られたとのこと。彼女はその瞬間を目撃している。
「自転車の配達員でした。あの大きなバッグは間違いないと思います。でも一瞬の出来事で、それ以外はわかりません」
メールの感じでは自転車に対して車が譲らず、当の自転車も意地を張ってすり抜けるはずがミラーに当った、というとこか。
「フードデリバリー(筆者注:あくまで彼女の憶測でしかないためフードデリバリーとした)のバッグも使わない悪質な配達員です」
この認識には誤りがある。どのフードデリバリーも(一部例外は後述)、基本的にはその会社のバッグを推奨されてはいるが使わなくていいし、会社名の表示義務もない。雇用ではなく業務委託、どんなバッグを使っても明確な違反にはならない。メールの女性の指摘通り、「どこの配達員かなんてわからない」のだ。自転車にはナンバーもないから、姿かたち以外では何をされたってどこの配達員かなんて判断つかない。
「警察には届けたんですけど、進捗ないです」
人身ならともかく、この程度の物損、当て逃げだと大抵の警察は頼りない。これはデリバリーに限った話ではないが、当て逃げ得の当てられ損だ。
ロゴなしバッグが配達員評価を左右する?
「勘違いする店とかありますよ、バッグ使ってないってね」
デリバリーの指名待ちで店の近くに集まっている配達員たち、通称・お地蔵様たちに今回も話を聞いてみる。まずフードデリバリーアプリ最大手、ウ―バーイーツ(Uber Eats)の配達員(正式には配達パートナー)。