国民の生命・財産を守ることが国家の究極の目的である。領土を守るというのは、その両方の側面があるから、どの国も小さな領土でも国家の全精力を注いで守ってきた。ところが、それができているのか不安になるのが、世界第3位の経済大国・日本である。
2021年2月、中国で「海警法」が施行された。日本の海上保安庁にあたる海警局が正式に準軍事組織に格上げされたと考えればよいが、つまりは武器の使用を含めて軍隊並みの装備や行動が許されることになった。すると間髪入れず、連日のように沖縄・尖閣諸島の周辺海域や、ついには日本の領海にまで海警局の艦船が侵入するようになった。
日本人が「まさか」と思うことが世界では当たり前に起きる。こと中国に関しては、「そこまではやらないだろう」ということを世界の非難のなかで堂々と続けてきた歴史がある。南シナ海でしたことは尖閣でもやる。南シナ海では、沿岸各国の猛抗議や一部の実力行使さえ軍事力で排除し、勝手に人工島や飛行場を作って中国の軍事要塞にしてしまった。歴代のアメリカ政府は中国の行動に抗議し、海軍を差し向けるなどしたが、結果的に無力だった。
このまま日本が行動を起こさなければ、尖閣は「確実に」中国が上陸して実効支配すると考えておくべきだ。アメリカ国防総省は2月23日の記者会見で、「中国船による日本領海侵犯をやめるよう求める。日本を支持する」と述べたが、屁の突っ張りにもならないだろう。おそらくこれも日本政府が裏で手をまわして「自分で言えないからアメリカに言ってもらった」という構図だが、そんなことは中国は百も承知だから、日本政府の弱腰を確認する好材料だとさえ思っているかもしれない。
中国に強く出られないのは、二階俊博・自民党幹事長ら「媚中派」議員のせいだという見方があるが、必ずしもそれだけではない。歴代の日本政府は、すべきことをすべきタイミングでしてこなかった。だから現状がある。東海大学海洋学部の山田吉彦・教授に聞いた。
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与野党ともに、国会議員の中には中国寄りの方がいます。特に野党の議員の方々は、安全保障では自分の票にならないから国会で質そうとする人は少ない。まさに中国の思う壺です。自国だけがいち早くコロナから立ち直るという千載一遇のチャンスを得て、一気に攻勢に出ているという状況です。
地元石垣市をはじめ、尖閣諸島管理の強化を求める声は強いですが、政府に提言してもいつの間にか立ち消えになってしまいます。民主党政権時代から自民党政権になっても、政策決定の段階で、何かすごい力が加わっているようです。
それは誰が中国に屈したとかではなく、おそらく経済でしょうね。中国は、日本が何か不都合な動きをしようとすれば、中国に進出した日本企業への締め付けを強める、さらにはスパイ容疑で逮捕するなど人質を取るというのが常套手段です。これをされると日本政府も日本企業も泣き寝入りするという構図をずっと続けてきた。それはどの政権でも同じで、対中強硬派を自任していた安倍晋三・前首相ですら、強硬な姿勢を貫くことができなかった。