2月28日に開催されたびわ湖毎日マラソンは、2時間4分56秒という鈴木健吾選手(25、富士通)の日本新記録などもあり、盛り上がりを見せた。歴代優勝者にアベベ選手(エチオピア、故人)や瀬古利彦氏(64)などが名を連ね、今回で76回の歴史に幕を下ろす同大会。好コンディションとあって、サブテン(2時間10分切り)が42人も出るという史上まれに見る高速レースとなった。スポーツジャーナリストが語る。
「エリウド・キプチョゲ選手の2時間1分台など、世界記録が続出するベルリンマラソンでも、サブテンは10人前後。こうした大会を開催できる日本のレース環境が世界的に評価されるでしょう。日本歴代20傑の9人が入れ替わるなど、日本のマラソンレベルの底上げも感じさせました」
そんな盛り上がりを見て“燃える”のはトップ選手だけではない。GPSを使ったオンライン開催大会なども活用し、さまざまな形でランニングに打ち込む市民ランナーたちだ。今回、日本のランナーたちがにわかに活気付く出来事が起きた。
「7分台を出した川内(優輝)君はいつも通りアシックスを履いていて、しかも厚底だった。ナイキなど海外メーカーの厚底はチャレンジしなかった私も満を持して厚底デビューしよう、とわくわくしましたよ。長年履いてる日本メーカーのなら、足に合うと思うし」(60代の市民ランナー)
今回、33歳にしてベストを47秒縮める2時間7分27秒(10位)、日本歴代でも20傑(同タイム)となる力走を見せた川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)が、アシックス社(兵庫県神戸市)の厚底だった。かつてはレースの最後に倒れ込むシーンがよく見られた川内選手が今回、ラストの競技場でも上体も起きた軽やかなスパートを見せたのは、分厚いシューズの力もあったのだろう。ソール(底面)はグリップ力のありそうな凸凹、形状は縦長でカーボンの反発力を生かせる形状とあって、国産ファンの想像をかき立てた。
アシックスは、2017年ごろに登場しトップ選手の定番となった厚底・カーボン内蔵型の市場に、昨年6月から参入した。しかし、すでに定着しているナイキ(アメリカ・オレゴン州)製などのシェアを奪うには至らず、今年正月の箱根駅伝でも使用選手ゼロという事態となった。今回のびわ湖毎日も1~9位はナイキ着用だった。