コロナによる検診控えで“隠れがん患者”が増加?(イメージ)
この1年間、未知の病である新型コロナウイルス感染症から、いかに命を守るかに意識が向けられていた。自粛生活の結果、新規感染者数は減少傾向になり、ワクチン接種も始まるなど、“脱コロナ”の期待は少しずつながらも膨らんでいる。また、感染対策意識の高まりは、年間死亡者数数千人とされるインフルエンザを大幅に減らした。
だが、コロナ前に「死に至る病」と怖れられていた疾病を忘れてはいないだろうか。日本人死因トップのがんは、コロナでも減っていない。むしろ「隠れる」ことで、患者を大幅に増やそうとしている。
原因は、コロナによる検診控えだ。厚労省の指針に基づき、5大がん(胃、大腸、肺、乳、子宮)の検診を行なう日本対がん協会・がん検診研究グループマネジャーの小西宏氏が語る。
「例年、延べ1000万人以上が検診を受けますが、受診者が激減しています。1回目の緊急事態宣言と重なった昨年4~6月の検査数は前年同期比で100万件以上減りました。秋に持ち直したものの、2度目の緊急事態宣言で再び受診控えが加速した。今年度通年では1~3割減、最大約300万件の減少が見込まれます」
国立がん研究センターの最新(2017年)のデータでは、がんと診断された新規患者は年間約100万人で、そのうち5大がんは約57万人を占める。
「このうち、人間ドックなど任意も含めた検診でがんが見つかるのは12万人ほど。今年度は例年より3割検診が減ったとすると、実に4万人近くのがん患者を見逃す計算になります。
それに加えて、がん以外の病気で通院中にたまたまがんが見つかるケースも多い。通院控えが増えた状況を考えると、早期発見できなかった患者はさらに増えると思われます」(小西氏)
内視鏡検査は3割減
早期発見が難しい状況で懸念されるのは「がん死」の増加だ。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センターの一石英一郎教授が指摘する。
「がん細胞はごく初期の段階から数年~数十年かけて、一般的ながん検診で発見できる1センチ程度の大きさになります(早期がん)。その後は、種類にもよりますが、1~2年の間にがん細胞が急増し、進行がんと呼ばれる状態になります。そうなる前にがんを発見することが重要です」