東日本大震災から10年──。震災関連死を含め、約2万2000人を超える死者・行方不明者を出した未曾有の災害の爪痕は、今も人々の心に重くのしかかる。
住宅や町のインフラの再建はほぼ完了した。沿岸部の岩手、宮城、福島をはじめとする6県621地区では、防潮堤や護岸の整備が進められ、現在は7割ほどが完成。国道や県道などの交通インフラも、震災前の状態にほぼ復旧した。
しかし、高齢化の進む被災地では、災害公営住宅で暮らす4割が65歳以上。独居のケースも多く、住み慣れた土地から移ってきたために、家を出たがらない傾向が強いという。さらに昨年からのコロナ禍が追い打ちをかけている。
避難先での新たな生活が長引き、故郷に戻らない選択をする人も少なくない。加速する人口減少にどう立ち向かうのか。今なお続く被災地の復興が抱える問題は、10年を経て激変した風景の中にあるはずだ。
前例のない37兆円を超える復興予算で、被災地はどこまで復興したのか。ここでは、本誌・週刊ポストが10年間見つめ続けた「岩手県」の復興する風景を定点観測でレポートする。
●岩手・陸前高田市(2011年5月4日→2021年2月25日)
約7万本あった松のうち唯一残った“奇跡の一本松”。2012年に枯死が確認されたが、保存整備された。高さ12.5mの防潮堤によって海岸線を見ることはできなくなったが、堤を越えた先の浜には名勝「高田松原」の再生を目指し、4万本の松の苗木の植樹が進む。