国内

森喜朗氏の問題発言バッシングから考える「寛容になれという不寛容」

森喜朗氏の問題発言について評論家の呉智英氏が考察する(時事通信フォト)

森喜朗氏の問題発言について評論家の呉智英氏が考察する(時事通信フォト)

 公人が失言したとき、われわれはどのような態度をとるべきなのか。寛容に受け止めるべきなのか、厳しい視線を向けるべきなのか。森喜朗・元東京五輪組織委員会会長の女性蔑視発言へのバッシング問題について、評論家の呉智英氏はこう述べる。

 * * *
 二月十三日「週刊新潮」からコメントを求める電話があった。森喜朗オリ・パラ組織委会長の「女性蔑視発言」が問題になっているが御意見をうかがいたい、という。ああ、それは森喜朗が低学歴だからだね、と、私は答えた。受話器の向こうで、記者が笑っているのが分かる。でも、こんなコメント、記事にできないよな、と私。一応デスクに聞いてみますが、と記者。

 なかなかしっかりした記者だ。学歴問題は脇へ置いといて、森発言バッシングについては…と、私は三十分ほど話をした。同誌二月二十五日号では、限られた字数内でよくまとめている。

「こうした風潮を評論家の呉智英氏はこう斬る。『寛容になれという不寛容』が蔓延(はびこ)っている」

 私の念頭には、昨年末に出た森本あんり『不寛容論』(新潮選書)があった。森本は二〇一五年には『反知性主義』がポピュリズム流行の風潮の中で話題となった。今度の『不寛容論』もいくつもの書評で取り上げられている。新大陸アメリカで寛容思想がどのように成立したか詳論し興味深い。しかも「寛容の強制」というパラドックスが成立することも指摘している。私が週刊誌でコメントした「寛容になれという不寛容」のことだ。

 これは論理学・哲学で言う「自己言及のパラドックス」である。「全称命題のパラドックス」と言ってもいい。命題propositionとは、提案、提題、題を命(の)べる、という意味で、命(いのち)とは無関係だ。

 自己言及のパラドックスは、古く聖書にも出てくる。「(クレタ島人が言った)クレタ島人は嘘つきだ」(テトス書1・12)。じゃ、その発言(命題)自体が嘘ではないのか、ということになる。仮にこれが「クレタ島人の半数は嘘つきだ」なら、こうしたパラドックスは生じない。全称命題だから、こういう逆説になる。部分命題ならパラドックスは起きない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン