落合は現役時代、開幕戦で苦い経験をしている。1985年から2年連続三冠王に輝いた落合は1986年オフ、ロッテから中日に移籍。翌年の巨人との開幕戦では、落合が“球界ナンバーワン投手”と認めていた江川卓の先発が予想されていた。しかし、王貞治監督は西本聖を選択。前年の勝ち星は江川の16勝に対し、西本は7勝であり、まさかの抜擢だった。西本は落合に対し全球シュートを投げ、4打数1安打に抑えて完封勝ち。巨人は4年ぶりの優勝に輝き、三冠王を期待された落合は3年ぶりの無冠に終わった。
「移籍1年目の開幕戦は特に重要だし、(当時の試合数で言えば)130分の1ではない。西本の攻め方は他球団にも参考になったし、落合は完全に出鼻を挫かれた。もし予告先発で開幕投手が西本とわかっていれば、結果は変わっていたかもしれない。開幕投手の選択は、監督の腕の見せ所でもある。予告先発は、サプライズをなくさせる制度でもある」
先発がわかった上での勝負を『正々堂々』という言い方をすることもできる。しかし、相手の意表を突く作戦もまた野球の醍醐味である。