ライフ

東日本大震災から10年 鎌田實医師が続けてきた被災地との交流

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 東日本大震災から10年が経った。被災地とそこで暮らす人たちとの関わりについて、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が振り返った。

 * * *
 あの日、ぼくはひたすら電話をかけ続けていた。相手は、福島第一原発から20キロ圏内にある、南相馬市立小高病院(当時)の遠藤清次医師である。

 テレビでは、刻々と原発の異常事態が明らかになり、住民の避難が始まろうとしていた。ようやく電話がつながったのは、3月16日未明。「生きていた!」と思わず叫んでしまった。

 遠藤先生は、南相馬にあるもう一つの総合病院に、患者をつれて避難していた。酸素療法に用いる医療用酸素や、病院の生命線である発電機を動かす重油が残り少ないと窮状を訴えた。

 すぐに、内閣府で働いていた厚生労働省の幹部職員に相談し、自衛隊の支援を受けながら、酸素や重油などを手配し、現地に運んでいくことになった。ここから、ぼくの東北支援が始まった。

温かいおでん、お風呂で悲しみをいやす力を高める

 被災地に初めて入る際、避難所ではまだ一度も温かいものを食べていないと聞き、大量のレトルトおでんを持っていった。底冷えのする体育館。熱々のおでんはとても喜ばれた。お酒を飲みたい人もいるだろうと思って、飲みたい人に缶ビールを一本だけ出した。津波で船を失った漁師の男たちが涙を浮かべて、「生き返った」と言った、その顔が今も忘れられない。

 避難所には、諏訪中央病院の医師や理学療法士が泊まり込み、朝、「立ち上がってラジオ体操をしよう」と呼び掛けた。避難生活では、それまでの生活リズムが崩れる。それが続くと体調を崩し、高血圧や糖尿病、脳卒中、うつなどのリスクが高くなる。それを防ぐためにも、運動で筋肉を動かし、タンパク質や野菜をとることが大事。そのことを明確に意識させられたのは、東日本大震災での支援体験からだった。

 お風呂に入れない人のために「千人風呂プロジェクト」も立ち上げた。石巻に2か所、仮設のお風呂を設営し、被災者に入ってもらった。お風呂で体も心も温まれば、悲しみをいやす力もついてくる。このお風呂は1年近く続き、延べ1万人以上の人が利用した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン