日本サッカー協会(JFA)は、日本代表が3月25日に日産スタジアムで国際親善試合を韓国代表と行うと3月10日に発表した。横浜市港北区にある日産スタジアムは、もちろん緊急事態宣言が3月21日まで延長された一都三県にある。何もないときであれば、サッカー日韓戦ともなれば、勝敗の行方だけでなく出場メンバーの品定めなど、ありとあらゆる話題で試合へ向けて盛りあがる一方だが、今回は戸惑いの声が大きい。俳人で著作家の日野百草氏が、この日韓戦をきっかけに上向きムードに変わって欲しいと願う広告代理店社員と、その前向きさに対する違和感はどこからくるのかについてレポートする。
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「まさか日韓戦が決まるとはね。関係者はホッとしてるでしょう」
電話口の広告代理店社員、市橋丞一さん(30代、仮名)に電話を掛けると嬉しそうな声が弾ける。筆者の編集者としての後輩に当たるが、大手教育関連企業を経て代理店に籍を置いている。大手ではないがそれなりに手広く手掛けている代理店だが、エンタメ関連のイベントに精通しているのでオタク関係含め、業界の情報源として重宝している。日韓戦が決まったことを聞きつけ、いの一番に連絡をとった。
「うちなんかコロナの自粛で壊滅ですよ。演劇とかコンサートなんか全然です。なのに日韓戦、すごいですよね」
コロナ禍でイベント関連は青色吐息、もはや存亡の危機と言ってもいいが、スポーツに関してはオリンピックイヤーでもあり、徐々に復調の兆しを見せている。
「プロ野球もJリーグも去年に比べれば平常運転でしょう。観客を入れる入れない、どれだけの数を入れるかの問題はあっても、去年に比べたらマシです。スポーツは演劇やコンサートに比べれば大きな力も働きますし、オリンピックだって控えてる」
思い返せば緊急事態宣言の期間延長が繰り返されるコロナ禍、イベントと大きく括れば、プロ野球とJリーグというイベントは半ば強行されてきた。高校野球など春の全国大会は中止、夏の全国大会も各地で代替開催となったがプロ野球は3ヶ月遅れながら開催された。昨年の拙筆『高3でレギュラーを掴んだ球児の父が語る「夏の代替試合」』でも触れたが、非常事態とはいえ二転三転した昨年の高校球児、とくに3年生はかわいそうだった。その扱いの違いをいまさら問わないが、納得できない人も多かった。
「あれは本当にかわいそうでした。高校サッカーはなんとかできただけにね」