昨年「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の大賞を受賞したスバル「レヴォーグ」。スバル独自の4WDシステムを搭載し、運動性能の良さに定評があるが、果たしてその実力は本物なのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、山岳ルートを使った走行距離1000kmのロングドライブ、そして北国での雪上試乗で検証した。
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2020年11月にフルモデルチェンジしたスバルの新型「レヴォーグ」。日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞し、マーケットの評価も上々だ。スターティングプライスが310万円という高価格帯でありながら、発売から今年2月までのスタートダッシュでは好調な販売実績を持続している。
スバルは年産100万台クラスの小規模メーカーだが、数年前まで日本の完成車メーカーの中では最も高い利益率を叩き出していた。しかし、完成検査不正という身から出た錆でその勢いを自ら止めてしまい、そこに世界的なCO2規制強化の圧力が加わるなど、逆境に喘いでいる。
レヴォーグは単に売れればいいモデルではない
そのスバルにとって、レヴォーグは単に売れればいいというモデルではない。クルマとしての良さを低コストで実現させる基盤技術の進化、電動技術導入の前段階でのCO2低減、運転支援技術の高度化など、複数のチャレンジを同時並行的に行う試金石でもあるのだという。
そのレヴォーグの実車は果たしてどういうクルマに仕上がっているのか。1000kmほどの旅を行い、その間に各要素をつぶさに観察してみた。
テスト車両はトップグレードの「STI Sport EX」。電子制御サスペンション、新型の高度運転支援システム「アイサイトX」、液晶メーターパネル、コネクティビティセンターとして機能する大型ディスプレイなどが標準で装備される。パワートレインは全グレード共通の水平対向1.8リットルターボ+チェーンドライブCVT(無段変速機)+フルタイムAWD(4輪駆動)。車両価格は10%税込みで409万円のモデルだ。
たまたま借りた車両がスタッドレスタイヤを履いていたため、ドライブルートは北国を選択。東京を出発し、最遠到達地点は山形の肘折温泉。往路は国道4号線と東北自動車道、東北中央自動車道などを経由。
復路は米沢から福島・喜多方~会津田島~栃木・鬼怒川温泉を経て関東平野に出るという山岳ルートをチョイスした。天気は雪のち晴れで、非常に低温。全区間1名乗車、エアコンAUTO。
まず、ドライブを通じて得られた第2世代レヴォーグの印象についての概略だが、鳴り物入りの運転支援システムのアイサイトXは非常に先進的でかつ実用性が高く、クルマの走行性能や乗り心地、快適性などボディ・シャシーの仕上がりは十分に良く、新型ターボエンジン&変速機のパワーソースは現状では次世代を切り拓くには甚だ心もとない──という感じだった。