コロナ禍は私たちの日常を大きく変えた。それは夫婦関係も然り。お互いを見直し、仲がよくなる夫婦がいる一方、決定的な亀裂が入った夫婦も。カウンセラーはそんな夫婦をどう導くのか──。『夫のLINEはなぜ不愉快なのか』などの著書のある家族問題カウンセラーの山脇由貴子さんがレポートする。
* * *
「寂しい」「早く会いたい」 夫が話す声が聞こえてきた
相談にいらしたのは、夫との関係に悩んでいる、という女性でした。
夫/隆弘(42歳) 自営業
妻/美紀子(37歳) 専業主婦
息子(5歳)
妻の美紀子が離婚を考えたきっかけは、夫の不倫でした。そしてコロナによる夫婦関係の悪化も関係していました。夫は自営業ですが、新型コロナ感染拡大防止のための緊急事態宣言を受け、テレワークに切り替えたことで、一日中一緒に過ごすようになり、夫婦関係が悪化した、と言うのです。
「もともと、夫は朝早く家を出て、深夜近くに帰ることが多かったので、夫婦で顔を合わせる時間はほとんどなかったんです。でも、テレワークになって一日中家にいるようになって、一緒にいる時間が短かったから、どうにかやってこられたということがわかったんです」
美紀子は私に言いました。
「食事を一緒にとるようになると、夫は私の作った料理に文句を言うんです。『うまくない』『こんなもの食べたくない』と言って、食べずに自分でコンビニに買いに行ったりしていました。食べないなら、最初から言ってくれればいいのに、食べ始めた後に文句を言って残すんです。それに、自分が仕事をしているからって、掃除機をかけているだけで『うるさい!』と言われたりもして、家事をするのも大変でした」
そして夫のだらしなさも目に付いて仕方がなかった、と言います。
「脱いだら脱ぎっぱなし、食べたら食べっぱなしで、一日中片づけ続けている感じでした。それに、私には何かと『うるさい!』と文句を言うのに、自分が夜、お酒を飲み始めると、大音量でテレビを観て、大笑いしたり番組内容に文句を言ったり。本当に迷惑でした」
隆弘は、テレワークとなる前はお酒は外で飲んで来るので、家で飲むことはほとんどなかったそうです。ですが、緊急事態宣言下では、外で飲むこともできなかったため、長時間、家で飲むようになったのです。
そんな中、隆弘の不倫が発覚します。
「なんだか、スマホをいじっている頻度がすごく高いんです。仕事部屋にいる時はわかりませんが、食事中も、晩酌をしている間も、ずっとスマホを気にして、いじっていました。それに、電話がかかってくると、ベランダに出たり、仕事部屋に入ってから電話に出るんです。おかしいな、と思っていました」