映画史・時代劇研究家の春日太一氏による、週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優の国広富之が語った、1979年から1981年にかけて放送され大人気となったドラマ『噂の刑事 トミーとマツ』での思い出を紹介する。
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国広富之はデビュー翌年の一九七八年、山口百恵主演テレビドラマ「赤いシリーズ」の『赤い絆』(TBS、一九七八年)に出演した。以来、大映テレビ制作のドラマに数多く出演する。
「大映ドラマは激しく、感情たっぷりにセリフを言う。声もなるべく大きく出す方針でした。
当時のテレビ画面は十四インチがメインで、お客さんは家族でご飯を食べながら、お茶を飲みながら、その小さな画面を観ています。それなら、よそ見をしていてもセリフだけははっきり耳に入るようにしろ、ということでした。
同じセリフを短い間に三回くらい繰り返して、ちゃんと視聴者の頭に入れてあげないといけない。呼ぶ必要がなくても、毎回しっかり名前を呼んで、泣く時もしっかり泣く」
七九年に始まる同じく大映テレビ制作の『噂の刑事 トミーとマツ』(TBS)では、普段は気弱だが怒ると凄まじい戦闘能力を発揮する刑事「トミー」を演じている。
「その頃は、いいお兄さんやエリート役ばかり演じていました。そこにいきなり大映テレビのプロデューサーが『この役、ふざけた役なんだけど、やってくれるかな』と言ってきまして。
僕はふざけるのが大好きなんで、台本をもらったらこれが面白い。真面目で気が弱い。で、突如強くなる。イメージが膨らむんです。撮影に入る時にはキャラクターができあがっていましたね。
監督に相談したら『それなら、もっとこうやれ』と乗せてくれました。『赤い』シリーズよりさらに楽しめました」