ライフ

緊急入院92才母 病床で「笑うチャンス」を狙う、驚異の「コミュ力」

(写真はイメージ)

入院中も毎日を明るく笑顔で過ごす92才の母親について語る(写真はイメージ)

 体当たり企画などを得意とする『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が、世の中や身の回りのさまざまなトピックに、素直な意見を投げかける。今回は、92才になる母親のお話です。

 * * *
 先週から熱が38℃超えの日が続いていた母親(92才)が、心不全を起こして再び入院するという。

「いま、救急車に乗って、受け入れてくれる病院を探しているからとりあえず来て!」

 スマホから聞こえてくる弟の妻の声は差し迫っていた。

 母親は4年前に父親(享年80)が病死してから、茨城の実家でひとり暮らしをしていた。家の前の畑には同世代のご近所がそれぞれ作物を作っていて、作業が終われば手料理を持ち寄って酒盛り。どうやらスケベ話をしながら盛り上がったりして、娘の私から見ても理想の老後に見えた。

 それが一昨年、90を超えた頃から、ご近所の1人が施設に入り、1人が亡くなり、静かに櫛の歯が抜けていった。

「まあ、トシがトシだから仕方あんめな」と言っていた母親も、週に2日ヘルパーを頼み、デイケアセンターでお風呂に入れてもらうようになり、トイレの失敗が続いた去年の暮れ、介護老人保健施設に入居した。

 が、コロナ禍でお見舞いはご法度。月に1度だけ、しかもリモートに限られた。

 その母親が、おかしくなったという。今度こそは覚悟か。3か月会えないまま、永遠のお別れか。だけど、会っていないと、悲しもうにも悲しめない。要はピンとこないのよ。

「ちょっと姉ちゃんはここで待ってて」

 やっとの思いで病院に着くと、11才年下の弟は私に、「車の中で待機しろ」と言う。近場のほかの病院のように「東京都在住の人間は立ち入り禁止」にはなっていないけど、それでも私が行くと手続きが面倒になるのだそう。もし、今日が母親と最後の別れになるのだとしたら、いや、そうか……もう会えないのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《虫のようなものがチャーシューの上を…動画投稿で物議》人気ラーメンチェーン店「来来亭」で異物混入疑惑が浮上【事実確認への同社回答】
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト