「確かにフェムテック製品は浸透してきており、周囲にも月経カップなどを使ったりしている人は増えてきました。しかし、価格はというと、ナプキンに比べてどれも安くはありません。いくら浸透してきたとはいえ、買いたくても買えない人がいる。その事実から目を背けるのは、月経が『なかったこと』にされてきたこれまでの社会と同じになってしまう」(清水さん)
3月8日、ファストファッションブランド「ジーユー(GU)」が売り出したフェムテック商品第1弾の「吸水ショーツ」は1490円。市場に出回る同様の商品では、現在のところこれが最安値。通常は3000~6000円のものが多い。先の月経カップも4000~5000円。ナプキンの使用枚数が減るため、節約になるという声もあるが、その初期費用が出せない層は確実に存在する。
「コロナ禍でアルバイトを失った女子学生の中には、明日のおにぎりを買うか生理用品を買うかという選択を迫られる人もいる。まず実現すべきは生理用品を行き届かせることだと考えます。海外ではすでに取り組みが始まっており、英スコットランドでは2020年2月から生理用品の無償化が実現しています」(清水さん)
こうした風潮のなか、これまで見えなかった問題も見えてきた。「生理の貧困」である。これまでは海外の問題だと思われがちだったが、実は私たちの身近なところにも「生理の貧困」は存在している。
生理用品を軽減税率の対象にするための活動を行っている団体「#みんなの生理」が行った調査によれば、「金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある」と回答した人が、20%に上った。また、SNS上では、母親のネグレクトによってナプキンを買ってもらえず苦労した女性たちの経験談が話題となっている。『生理用品の社会史』『月経と犯罪“生理”はどう語られてきたか』などの著書がある歴史社会学者の田中ひかるさんはいう。
「新たなフェムテックが次々と登場し、女性たちの生活が便利になる一方で、ナプキンさえ手に入らない人たちも存在します。しかし、問題が可視化され、具体的な解決に向けて動き出した自治体もあります。今後、こうした動きが広がっていくのではないでしょうか。
過去、女性たちは月経があることで、『穢れ』『病人』と扱われ、まともな生理用品や鎮痛薬もなかったため、学業や職業を諦めざるをえませんでした。フェムテックが広く行きわたることで、女性が生きやすくなることは歓迎すべきことです。
もちろんフェムテックと一言で言っても玉石混交ですから、情報を見極める力、それについて教える初経教育の充実も望まれます」(田中さん)
実際、東京都豊島区では経済的な理由で購入が困難な女性を対象に生理用品を無料配布している。
※女性セブン2021年4月1日号