東日本大震災から10年という節目の直前だった2月13日、福島県沖で震度6強の地震が発生した。全国の生活用品店では防災商品の売り上げが急増し、横浜ロフト(神奈川)では、2月19日時点で売り上げが前週比2.2倍に増加したという。
最近はインターネットで検索すれば、「防災グッズ30点セット」「女性向け1人用防災グッズ」など、個性豊かな商品が見つかる。また、格安店でも防災グッズが手に入るようになった。一方で、「本当に必要なの?」と疑うものもある。大地震を経験した人や防災の専門家に話を聞くと、不要なアイテムも多いのだ。防災アドバイザーの岡部梨恵子さんは、避難バッグの鉄則を指摘する。
「逃げるときに必要な荷物は、普段遣いのリュックに収まる程度で、重さは5~6kgが限度。かばんが大きくなるほど、あれもこれもと物を入れたくなって、その結果、素早い避難ができなくなる恐れがあります。私の場合、避難用のリュックには1日半程度の荷物しか入れていません。避難所に無事に到着することが目的なら、水も食料も1日分あればいい。まずは身軽なことが優先です」
実際、東日本大震災で津波の被害に遭った田村庄太郎さん(仮名・68才)は、準備していた防災グッズはすべて流され、命からがら、避難所にたどり着いたという。身一つだったが、避難所では備蓄されていた非常食と水が配られ、飢えることはなかった。
「すぐ持ち出せるよう、玄関に避難バッグも用意していたし、発電機や食料の備蓄もありました。しかし、家も人も流されるような津波では、備えていても何も役に立たなかった。仮に持ち出せたとしても、ほとんどが水に濡れて使えなかったでしょう」(田村さん)
一方で、圧倒的に人口の多い東京では、避難所に受け入れてもらえない可能性がある。復旧に時間がかかることも予想されるため、首都直下地震に備え、各家庭で2週間分の食料や水を備えておくことを推奨する声もある。
「避難後に余震が落ち着いたら、必要なものを自宅へ取りに帰ったり、自宅で避難生活を送ることも考えられます。そうなれば、ガスや電気が止まっていても、カセットコンロを使って常備野菜や冷蔵庫にある食品などで調理可能です。わざわざ高いお金を払って防災食を買う必要はありません」(岡部さん)