延期を乗り越え7月に開催される予定の東京五輪は、一筋縄ではいかなそうだ。現段階で、すでに大きな問題に直面している。
開催するためには、やむを得ない判断なのか。政府と五輪組織委、東京都が、海外からの一般客受け入れを断念する意向と報じられた。その影響は計り知れない。まず問題になるのが、すでに販売済みの海外向けチケットだ。
都民が減収分を税金で肩代わり
東京五輪は当初、1000万枚超のチケットを販売予定で、そのうち海外向けは90万枚程度が販売済みだった。組織委によれば、東京五輪のチケット収入は約900億円と見込まれている。過去の大会では全体の1~2割が海外販売分となっている。単純計算でも100億円規模の減収は免れない。
五輪招致運動で推進担当課長を務めた国士舘大学客員教授の鈴木知幸氏によれば、「大会収支が赤字の場合、IOC(国際オリンピック委員会)と開催都市契約を結ぶ東京都が負担することになる」という。減収分は公費で穴埋めされるのだ。
フェンシング、馬術はガラガラ?
競技会場となるスタジアムでも、異例の光景が繰り広げられることになる。元JOC職員でスポーツコンサルタントの春日良一氏が言う。
「海外客が全体の1~2割というのは、あくまで“平均値”の話です。海外から東京五輪のチケットを購入する場合、組織委が各国のオリンピック委員会(NOC)に配分したチケットを公式代理店を通して入手する。各代理店は、自分たちが担当する国の人気スポーツを踏まえ“この競技のチケットは多めに配分してほしい”と要望を出している。その配分は各国との交渉なので、日本ではマイナーでもヨーロッパなどで人気の高い競技は海外で多く販売されている可能性が高い」
フェンシング、馬術、射撃、自転車競技、ハンドボール……これらの競技では“空席率”が高いかもしれない。
※週刊ポスト2021年4月2日号