東京五輪は今年7月に予定通り開催されるのか──。海外からの観客を受け入れない意向であると報じられているが、そうなると世界的な「スポーツの祭典」としての価値が大きく変わってくる。
「観客数50%」なら国内客も間引かれる?
現在、海外客の受け入れ停止に加え、観客数に上限を設ける可能性も示唆されている。IOCのバッハ会長は5、6月まで推移を見て決めると語っているが、現状では「50%制限」案が有力視されている。海外客が全体の1~2割とすれば、さらに3~4割を減らさなければならないということか。元JOC職員でスポーツコンサルタントの春日良一氏はこう話す。
「すでに国内で約445万枚のチケットが販売済みですが、五輪が1年延期されたことで約81万枚が払い戻しとなった。差し引き約364万枚で、当初の販売予定枚数の約4割に満たない。50%制限なら、現在チケットを確保している人が観戦できないことはないと思われます。
それでもソーシャルディスタンスを取れるよう観客席を再調整するとしたら大変な作業です。もし5月に観客制限が確定するとしたら、開催まで2か月ほどしかない。かなり難しい作業になる」
“損失額”はいくらになるのか
観客制限はチケット代の減収だけでなく、日本経済にも大きなダメージを与える。関西大学名誉教授の宮本勝浩氏は、海外客を受け入れず、かつ観客数を50%に制限した場合、経済的な損失は1兆6258億円になると試算している。
「開催期間中の外国人観光客の消費支出がゼロになる。さらに、五輪観戦者が日本を再び訪れる『リピート観光』も見込めなくなるためです。ちなみに東京五輪そのものが完全に中止になった場合の経済的損失は4兆5151億円。観客制限による損失は中止の3分の1程度となります」
コロナ禍で大幅な減収に苦しむ観光や航空などの業界にとって、東京五輪は業績回復の希望だったが、大きな効果は期待できそうにない。
※週刊ポスト2021年4月2日号