芸能

牧伸二、タモリ、ひとり、バカリ… ピン芸人の誕生と発展の歴史

ピン芸人の変遷を振り返る(写真は牧伸二。時事通信フォト)

ピン芸人の変遷を振り返る(写真は牧伸二。時事通信フォト)

 お笑いの歴史を振り返る表現として、昨今は「第○世代」という言い方が浸透している。しかし、ピン芸に焦点を当てて歴史が振り返られることは少ない。ピン芸人はどんな流行の変遷を辿ってきたのか──お笑い評論家のラリー遠田氏がレポートする。

 * * *
「ピン芸」の定義は曖昧だ。日本ではもともと一人で演じる落語、講談、浪曲などの話芸の伝統があった。

 それらに当てはまらないものを「ピン芸」と考えるとすると、そのルーツと言えるのは立ってしゃべる形の漫談だろう。「形態模写」「声帯模写」と呼ばれたモノマネ芸も広い意味ではここに含められる。戦前から徳川夢声、柳家三亀松、江戸家猫八などが漫談家として活動していた。

 戦後も、医療漫談のケーシー高峰、ウクレレ漫談の牧伸二、「わかるかな、わかんねえだろうな」のフレーズで知られる松鶴家千とせなど、さまざまなタイプの漫談家が人気を博した。

 伝統的な漫談とは一線を画す現代的なピン芸の先駆けとなったのはタモリである。彼は芸人としての下積みを経験することなく、赤塚不二夫、山下洋輔ら当時の文化人にその才能を見いだされ、インチキ外国語などの密室芸で注目された。『笑っていいとも!』が始まるとお茶の間の人気者になった。

 タモリの登場以降、単なる漫談やモノマネではない「その他」のジャンルとしてのピン芸が徐々に脚光を浴びるようになった。

 1990年代に入り、若手お笑いブームで芸人の数が爆発的に増えると、もともと組んでいたコンビを解散してピン芸人に転身する人も出てきた。有吉弘行、劇団ひとり、バカリズム、土田晃之など、現在ピン芸人としてテレビで活躍している芸人の多くはコンビ経験者である。

 2000年代には『エンタの神様』『爆笑レッドカーペット』などのネタ番組が人気になり、そこから多くのピン芸人が輩出された。

 2002年にはピン芸の大会『R-1ぐらんぷり』も始まる。最初は大阪ローカルの地味な番組だったが、全国ネットになってからは世間の注目度も上がり、ここからブレークする芸人も出てきた。

 2020年には、ピン芸人同士の即席ユニットであるおいでやすこがが、漫才の大会『M-1グランプリ』で準優勝するという快挙を達成。ピン芸人の底力を見せつけた。

※週刊ポスト2021年4月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン