東北新社やNTTによる高額接待問題が次々と明るみになり、放送と通信の巨大な「電波利権」を牛耳る官庁であることが浮き彫りになった総務省。
日本の放送や通信事業などの電波ビジネスは、欧米のようなオークションを導入せず、総務省がいわば無料で割り当てる。そのため、新たに電波が欲しい事業者や、すでに電波を持っていて既得権を守りたい事業者が総務省の役人や大臣を接待してきたというわけだ。
だからこそ、新聞・テレビの報道は接待問題の奥にある「電波」をめぐる利権構造に決して踏み込もうとしない。総務省の電波割り当てで最も恩恵を受けてきたのが新聞社・テレビ局だからである。
欧米ではメディアの集中排除原則から、新聞社が放送業に資本参加して影響力を行使する「クロスオーナーシップ」は規制されているが、日本では多くの新聞社がテレビ局の大株主となって系列化している。
そうしたテレビ局の電波利用料の安さが電波利権の核心の一つである。
携帯キャリアとテレビの年間の電波利用料を比較すると、NTTドコモの約184億円、ソフトバンク約150億円、KDDI(au)約114億円に対し、テレビ局(地デジ)はNHKが約25億円、在京キー局5社はいずれも6億円台ではるかに安い。ちなみに地方局の最低額は奈良テレビの年間100万円だ。
総務省からタダで電波を割り当てられ、格安の利用料しか払わない。内閣官房参与にして、本誌・週刊ポストでNHKの「Eテレ売却」を提言した高橋洋一・嘉悦大学教授は、こうした実態を「テレビ局のスーパー電波利権」と呼ぶ。新聞・テレビは既得権を守るために電波オークションの導入や電波料金の値上げにこぞって反対してきた。
大手新聞社や民放キー局には「波取り記者」と呼ばれる記事を書かない記者がいる。前出の高橋氏は、自身の経験を語る。
「波取りとは、総務省から電波の割り当てをもらう、つまり“波を取る”のが役目だからそう呼ばれている。
私が総務大臣補佐官時代に秘書官室にベテランの新聞記者が名刺を出して挨拶に来た。他の記者に比べて年長だなと思って他の役人に尋ねると、“あれは波取り”とみんな知っていた。総務省の役人に人脈をつくって電波行政についてロビイングしたり、本社のテレビ担当の幹部と役人の会合をアテンドしたりする」