新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の感染予防のために一斉臨時休校を当時の安倍晋三首相が要請したのは、昨年2月27日のことだった。学校は長い休みへと突入していくが、そのなかで注目されたのが自宅にいても授業が受けられるオンライン授業だった。そして小中学校の生徒全員にパソコンやタブレットなどのICT端末を配布する「1人1台端末」も、前倒しで実現されることになった。
とはいえ、学校でオンライン授業の準備が着々とすすめられている状況ではない。1人1台端末が実現しても、学校での授業に活用することになりそうなのだ。その一方で、オンライン授業に積極的なのが学習塾である。
「公益社団法人 全国学習塾協会」(以下、協会)が昨年4月14日~19日にオンライン授業について調査したところ、「すでに導入している」との答えが全体の53.9%、「導入する予定」が21.1%を占めていた。多くの学習塾がオンライン授業に積極的なことがわかる。
さらに同調査では、すでに導入している学習塾に対して「導入時期」を訊ねているが、全体の48.8%までが4月と答えている。つまり、一斉臨時休校をきっかけに、多くの学習塾がオンライン授業を導入したことになる。学校に比べて対応の早さが目立つ。
これで学習塾の授業が一気にオンラインに切り替わったかといえば、そんなことはない。協会の7月時点の調査によれば、「オンラインのみ」の授業をしているところは、全体の0.8%しかない。対して「対面のみ」の回答は、55.6%もある。そして「ほぼ対面・一部オンライン」が39.5%である。
オンライン授業を導入したものの、それがフル活用されているわけではないのだ。その理由を協会の事務局では、「学習塾はサービス産業ですからニーズに応える必要があるからです」と説明する。
協会の7月時点の調査では保護者の希望も調べているが、対面授業を望む回答が全体の87.8%も占めている。オンライン授業を望む回答は、1.7%でしかない。保護者には、「対面で指導してもらわないと勉強しない」という気持ちが強いのかもしれない。
しかし、学習塾がオンライン授業をあきらめているわけではない。「対面だと教室に通える範囲でしか生徒を集められませんが、オンラインだと全国を対象にできます。大手学習塾を中心にオンライン指導コースを開設するなど、新規事業として有望視する動きはではじめています」と、協会事務局では説明する。