東京五輪が今年7月に開催される予定だが、海外からの観戦客を受け入れない見通しで、経済損失が1.6兆円を超えるという暗い試算も出ている。
中国製ワクチン問題で生じたIOCと組織委の溝
たとえ選手団や関係者のみを海外から迎え入れるとしても、感染対策は必須だ。しかし、ワクチンをめぐってIOCと日本側の足並みは揃っていない。
3月11日のIOC総会で、バッハ会長は中国から東京五輪の選手らにワクチン提供の申し出があったと発表した。これを受け、丸川珠代・五輪担当相は「事前に伺っておらず、調整もなかった」としたうえで「ワクチン接種を(参加の)前提としない」と強調した。
日本では厚労省の認可を受けていない中国製ワクチンは接種できない。それでもバッハ会長は「五輪に参加する国・地域の9割が協議を開始した、または近く始めると回答した」「保健当局が承認した国だけに適用される」と前向きな姿勢を改めて示した。五輪招致運動で推進担当課長を務めた国士舘大学客員教授の鈴木知幸氏は言う。
「バッハ会長はワクチン確保が進まない日本にしびれを切らしたのではないか。中国にとっては東京五輪が開催中止となれば翌年の北京冬季五輪開催が危うくなることを見越しての申し出でしょう。森喜朗氏の組織委会長退任以降、日本側とバッハ会長との間のコミュニケーション不全が目立つ。今後も組織委とIOCの間で異なる見解が次々と出てくるのではないか」
「選手全員にPCR検査」本当にできる?
昨年12月に政府、東京都、組織委がまとめたコロナ対策の中間整理では、五輪選手に対して入国時だけでなく、滞在中も4~5日おきにPCR検査を実施するとした。最近になって橋本聖子・五輪組織委会長はその頻度をさらに増やすことを検討しているとも述べている。