「弟にむけた曲があるっていうのは、テレビで見て知っていたんだけど、いざ曲を聴いたら、もう、泣けて仕方がなくてね……」
こう語るのは、志村けんさん(享年70)の兄・知之さん(74才)だ。彼が聴きながら目に涙を浮かべていたのは、吉幾三(68才)が1月下旬にリリースした『二人のブルース』。知之さんもまた志村さん同様、吉のファンだというが、リリースされてすぐには聴くことができなかったという。
「吉さんの歌声は、独特の深みや味わいがあって、胸を打つんだよね。弟がちびちびとお酒を飲んでいる姿を思い出して、とにかく涙が止まりませんでした」(知之さん・以下同)
最愛の弟である志村さんを失ってから1年。ようやく落ち着きを取り戻しつつあるという知之さんが、この1年を振り返る。
知之さんが志村さんと最後に会ったのは、亡くなる1か月ほど前の2020年2月25日。麻布十番の寿司店で開かれた志村さんの古希を祝う会だった。
「息子(志村さんの甥)が選んだ紫色のちゃんちゃんこを着て、終始楽しそうだった。“今年はドラマと映画でも頑張らないと”と話していたんだよね」
ドラマとは、NHK連続テレビ小説『エール』、映画とは初主演の予定だった山田洋次監督作『キネマの神様』のことだ。来年の誕生日もみんなでお祝いをできるとばかり思っていたが、その願いは叶わなかった──。
通夜と葬儀は2020年4月11日と12日に親族のみでとり行われ、四十九日法要もひっそりと済ませた。コロナ禍という状況を鑑み、関係者やファンが参列できるお別れ会はまだ開催されていない。その影響もあるのだろう。「志村さんに感謝を伝えたい」と、東京・東村山市内にある志村家のお墓を訪れるファンが後を絶たないという。墓を掃除して花を手向けたり、手紙を置いていくファンも多く、その数は段ボール3箱分以上にもなっている。ファンの心残りは、いまだ開催されていない「お別れの会」だ。
「お別れの会については、まだ何も決まっていないんです。いまのところは、オンラインでの会も予定していません。一周忌の法要も親族のみで行う予定です」
三鷹市内にある志村さんの自宅も、まだ整理が進んでいないそうだ。