都内有名医大病院に設けられた接種会場。そこで、3月中旬に新型コロナウイルスのワクチンを接種した看護師Aさん(30代女性)が当日の様子を明かす。
「翌日に発熱する可能性があるという理由で、接種はオフの日の前日。私は夜勤明けのお昼頃に接種しました。1時間で30人ほどが順番に打ちましたね。私がワクチンを打ったのは利き手ではない左腕。6時間後に筋肉痛のような痛みが現れ、翌日は腕がまったく上がらないほどでした。ただ、ほかの副反応が出なかったのでホッとしました」
コロナ禍を終息させるためのカギとなるワクチン接種。日本では現在、約480万人の医療従事者に対して米ファイザー製ワクチンの先行接種が進むが、現場にはある困惑があるという。都内大学病院勤務の看護師Bさん(20代女性)が話す。
「今回接種している『mRNAワクチン』は人類初のワクチンなので、医療従事者の中でも不安がある。接種は任意だけど、うちの病院では上司から『怖いのが理由で接種を拒否することは許されない』と遠回しに言われていて、事実上の強制です。
ワクチンが怖いのは異変がすぐに起こるとは限らない点です。数年後に障害が出たら誰が責任を取ってくれるのでしょうか……。接種に不安が残ることやコロナ禍の過酷な勤務に疲れ果てたこともあり、私は病院を辞めることにしました。他院では接種反対の署名運動をしようという動きがあるそうです」
実際、三重県の病院が院長名で「接種を受けた職員は評価の対象とする」というメールを全職員に送り、数日後に撤回したと報じられた。
混乱を極める中、現場では別の困惑の声が上がっている。都内大学病院に勤務する医師が打ち明ける。
「供給量が限られているのに、余ったワクチンを相当数、廃棄しているのが現状です。インフルエンザワクチンなら、次の瓶と合わせて打つこともできるのに、もったいない」
ファイザー製のワクチンは1バイアル(瓶)で6回の接種を前提とする。しかし、日本にはこれに対応できる注射器の調達が間に合っておらず、1瓶で5回しか接種できない。その余った分が、廃棄されているのだ。