2020年度の将棋界は、記録4部門(対局数、勝数、勝率、連勝)のうち勝数と勝率の2部門を藤井聡太二冠(18)が制する結果となった(44勝、勝率0.846)。4年連続勝率8割超えは史上初の快挙である。その熱気冷めやらぬまま、3月27日からは将棋の早指し王を決定する番組『第4回ABEMAトーナメント』が幕を開ける。同番組でチームリーダーを務める藤井二冠がインタビューに応じた(取材・文/輔老 心)。
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夕焼けが美しい濃尾平野の東部に、藤井二冠の故郷“せともの”の町・愛知県瀬戸市はある。手作りの応援垂れ幕がたくさんかかった商店街には、通りに面したおもちゃ屋さんの壁に最新対局の大盤が設置され、対局の日は速報で駒を動かすという。名物の焼きそば屋さんの若おかみは「戴冠記念に商店街からそばを贈呈したんです」と嬉しそうに語ってくれた。
そんな町から藤井二冠は、対局のたびに東海道新幹線で上京する。
「新幹線の座席は必ずE席です。車窓から富士山を見たいですからね」
彗星のように現れた中学生棋士は、キャリア4年でますます強くなった。18歳にしてタイトルも「王位」「棋聖」とふたつ取り、段位は八段に。最年少記録を次々にマークしている。
今年2月には、高校を退学したニュースで世間を驚かせた。あと数か月で卒業だったはずなのに、きっぱりと退学を決意。14歳からプロの世界で生きる青年の判断は、その指し手のように鋭く切れる。
「何事もそうかなと思うんですけれども、どんどん突き詰めていくと、他の分野との関連性は大体薄れてくるので……(笑い)。帰宅部タイプなので、通学の時に駅まで歩くのが唯一の運動でしたが、それがなくなる今後は運動不足が心配です」
そうユーモアたっぷりに高校生活を振り返った藤井二冠。14歳のデビュー時から伸び続けた身長は170センチ。頭が小さくてスタイルがいい。白い手は結構大きめで、だからこそ着物の着こなしが映える。着物の着心地は「思った以上に快適でオススメ」だそうだ。
取材にもだいぶ慣れてきて、付き合いの長いヘアメイクさんは「中学生の頃は、メイク中にずっと下を向いて恥ずかしがっていましたけれど、最近は堂々としてきました」と証言した。今年度も勝数と勝率の2部門で1位に輝き、史上初めて4年連続で勝率8割越えを達成。異次元、の声が聞こえてくる。