緊急事態宣言の解除に伴い、久しぶりに歯科医院へ足を向ける人も多いだろう。かつては当たり前だった銀歯治療が過去のものになりつつあるように、歯科分野の進歩はめざましいものがある。
例えばこれまでは「印象材」という粘土のような素材を口に含ませて歯の型を取り、それをもとに歯科技工士が作ってきた被せ物も、いまやコンピューターでスキャニングできる「CAD/CAM」という技術を使い、その場ですぐに作ることができるようになった。歯の保存修復学を専門とする長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の准教授・久保至誠さんが解説する。
「今後、熟練の歯科技工士が不足するようになると予測されています。そのため誰がやっても一定の技術が保たれるこうした機器は、治療のクオリティーを底上げすることが期待でき、有望といえるでしょう」
とはいえ、最新とうたわれる器具を喧伝する歯科医には注意が必要なケースもある。
「画質のいい最新機器で口腔内をくまなく見ることができるゆえ、“見えすぎる”状態が弊害になることもあるかもしれません。つまり、従来であれば見過ごすような、経過観察をしても悪化しないちょっとした異変も治療の対象になり、本来ならば必要ない処置が増え、余計に歯が傷つけられることもあるわけです」(久保さん)
日本人が歯を失う原因の1位である歯周病でも注意すべき治療法が存在する。『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)の著書があるジャーナリストの岩澤倫彦さんが問題視するのは、抗生物質の投与や殺菌液を使った「痛くない、お手軽な治療」だ。