いよいよプロ野球が開幕したが、すでに阪神ファンは優勝したかのようなお祭り騒ぎだ。熱い期待の中心にいるのは、ドラフト1位ルーキーの佐藤輝明(22)。オープン戦では打って打って打ちまくり、6本塁打でオープン戦初の新人本塁打王に輝いた。
スポーツ紙も「佐藤輝・新人史上初キング」(デイリースポーツ・3月22日付)と一面で報じるフィーバーぶり。往年の阪神の名二塁手で、元監督の安藤統男氏も興奮を隠せない。
「佐藤はボールを遠くに飛ばす天性の能力を持っている。打撃に関しては何も言うことがない。シーズンが始まって一線級のピッチャーが出てくると最初は戸惑うかもしれないが、順応力が高いのでどんどん対応できるのではないか。今シーズンは、久しぶりに楽しく野球を見られそうな予感がしています」
すでにチームは佐藤を中心に回っている。阪神OBの田尾安志氏が言う。
「追い込まれてもチョコンと当てにいくのではなく、フルスイングするのが佐藤の最大の魅力です。彼の影響で他の打者も『しっかり振り切ろう』と意識を持つようになった。今は外野を守ることが多いが、サードも守れるので内野陣もうかうかできない。
チーム内でレベルの高い競争が起きている阪神がペナント争いに加わることは間違いない。私の予想はズバリ優勝です」
ドラフト制度が始まって以降、新人時代に注目され、一軍で結果を残した打者はいくらでもいる。しかし、いきなり“球界の主役”に躍り出た選手はほとんどいない。
数少ない例外といえるのが、1986年、西武ライオンズにドラフト1位で入団した清原和博である。
清原はPL学園の4番バッターとして1985年に夏の甲子園を制覇。プロ野球史に残る「涙のドラフト会議」を経て、ルーキーイヤーを迎えた。
奇しくも1985年は、2リーグ制になってから阪神が初めて日本一に輝いた年でもある。清原のデビューから35年──清原と同じく関西出身の佐藤が、35年の時を経て、一大フィーバーを巻き起こしている。
右打者と左打者、高卒と大卒という違いはあれども、清原と佐藤には共通点が多い。往年の名選手が口を揃えるのは、独特の「存在感」だ。
新人時代の清原と対戦し、今年のオープン戦で佐藤のプレーを見た阪急の大エース・山田久志氏が指摘する。
「35年前に対戦した清原は高校を卒業したばかりの選手には見えず、ふてぶてしくて堂々としていました。佐藤も雰囲気がよく似ています」
※週刊ポスト2021年4月9日号