無派閥で党内の足場が弱い菅義偉・首相の政権基盤を支えているのは、「二階」「創価学会」「維新」の3本柱といわれる。
後見人の二階俊博・幹事長が自民党内に睨みを利かせ、与党では公明党・創価学会とのパイプに支えられ、野党には友好関係にある日本維新の会という“補完勢力”を持つ。その微妙なバランスで、コロナ対策に失敗しても「菅おろし」の動きを防ぎ、政権を維持してきた。
だが、その柱が1つずつ折れていく。蜜月だった二階氏との関係は、いまや冷め切っていると言っていい。
首相を支える者が誰もいなくなると、自民党内で仲間割れが始まった。政権をかき乱す側に回ったのが二階氏だ。
「そこまで言うのか」。さる3月10日、超党派の「日朝国交正常化推進議員連盟」の会合で二階氏の発言を聞いた自民党議員たちは衝撃を受けた。
議連は4月に訪米する菅首相にバイデン大統領との日米首脳会談で拉致問題解決への協力を働きかけるよう求めたが、二階氏は首相が「条件をつけずに会う用意がある」と金正恩総書記に呼びかけていることに、
「条件をつけずに向き合うって、それどうするんだ。こんなことでは国民は納得していない」
と真っ向から批判の言葉を浴びせたからだ。
二階氏の“奇言”はそれだけではない。大規模な選挙買収事件の被告、河井克行・元法相が公判で議員辞職を表明したことに、二階氏は会見(3月23日)で、「他山の石としてしっかり対応していかなくてはならない」と発言。「妻の案里氏は二階派で“他山”とは言えないだろう。無責任だ」と党内でも批判が出ている。二階氏側近に言わせると、「河井は菅首相の側近。“菅の監督責任、不始末で迷惑している”という思いがあったんじゃないか」ということになる。
その二階氏が気色ばんだのは解散・総選挙をめぐる問題だった。菅首相が会見で「9月までが(総裁)任期だから、その中で考えていく」と発言し、10月の衆院任期満了の前にあくまで自分の手で解散する姿勢を示せば、下村博文・政調会長も「追い込まれ解散という構図はつくりたくない」と4月の首相訪米後の解散の可能性に言及するなど、自民党幹部たちから一斉に解散論が流された。