ついに“一人横綱”となった白鵬だが、すでに右膝を手術して5月場所の休場を決めている。6場所連続休場となっても平気でいられるのは“2人の前例”があるからなのか──。
その前例とは、元横綱の貴乃花と稀勢の里(現・荒磯親方)だ。ハワイ勢と対峙して一大ブームを巻き起こした貴乃花と、2017年にモンゴル勢が上位を席巻するなかで2019年ぶりの日本出身横綱となった稀勢の里は、どちらもキャリア終盤に長期休場があった。
貴乃花は7場所連続で全休(2001年7月~2002年7月)、稀勢の里は全休4場所を含む8場所連続休場(2017年5月~2018年7月)だ。白鵬が来場所を休んでも、6場所連続休場(全休は3場所)で、2人の休場記録よりも短い。
綱の重みを誰よりも感じてきた貴乃花は7場所連続全休明けの重圧を「土俵上ではもう1人の自分が上から見ている感じだった」(週刊ポスト3月8日発売号)と表現していた。改めて白鵬の延命の言い訳となっていないかを尋ねると、事務所を通じて「答える立場にありません」とするのみだった。
もうひとりの元・稀勢の里は、所属部屋に取材を申し込んだが、「お断わりします」とした。
ただし、貴乃花、稀勢の里と、白鵬を同列に論じることへの疑問もある。
「貴乃花は右膝半月板損傷、稀勢の里は左の上腕筋と大胸筋の損傷という大ケガとの戦いで、克服できなければ引退という覚悟があった。一方の白鵬には、年寄株の確保という別の事情が垣間見える。ようやく引退した鶴竜も協会に残るための帰化の手続きがなかなか進まなかったことが背景にある。
協会の旧態依然としたルールが一因とはいえ、横綱在位中の休場日数は今場所前までで白鵬が202日間となり、貴乃花(201日)、稀勢の里(97日)を超えた。連続休場記録の言い訳がどこまで許されるのか」(ベテラン記者)
横綱の重みが、どんどん失われていく。
※週刊ポスト2021年4月9日号