全棋士参加によるドラフト会議を行なってチーム編成する団体戦で、将棋の早指し王を決定する番組『第4回ABEMAトーナメント』が3月27日から始まり、異色のルールも相まって注目を集めている。トーナメントでチームリーダーを務める永瀬拓矢王座がインタビューに応じた(取材・文/輔老 心)。
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令和の将棋界で四強と言うと、豊島将之竜王・叡王(30歳)、渡辺明名人・棋王・王将(36歳)、藤井聡太王位・棋聖(18歳)、永瀬拓矢王座(28歳)の4人を指す。タイトルを4人で独占しているだけではなく、挑戦者として登場することも多い。
その中で、ひときわ異彩を放つのが、永瀬王座だ。
「ゲームは一切やりません。それは老後の楽しみに取っています。老後はゲーム三昧です」
「棋士は体重コントロールが大切。重くなりすぎると正座がきつい。デザートを食べすぎるのは本末転倒」
「対局中にはバナナをほおばる。バナナは万能な食べ物ですから」
「強い人は美しい。贅肉がなくなって筋肉の美しい筋が見える感じになってきます」
発するコメントのひとつひとつが際だっている。少年時代に将棋に没頭した理由だってひと味違う。
「将棋だけが人並みにできたから。子どもの頃、学校が嫌いで、勉強ができなくて、他人の半分しかできなかった。でも将棋は人並みで、中くらいにできたから没頭したんです。ほかのことが鈍臭すぎましてね。子どもは残酷なので、辛かったなあ(遠い目)。14歳の自分にかけてあげたい言葉は、『今を生きれば、将来は暗くないぞ』」
幼少期の実力を「人並み」と語る彼は、どうやって強くなったのか。それも四強と呼ばれるほどに──。