コロナ禍の中、フィギュアスケートの世界選手権がスウェーデン・ストックホルムで開催(3月25日に男子SP、27日に男子フリー)。世界選手権では4年ぶりの優勝の期待がかかった羽生結弦(26才)だったが、結果は3位だった。
羽生はコロナの影響で、昨年から練習拠点のカナダ・トロントに戻れず、コーチ不在で練習を続けてきた。今大会はコロナ感染に対する不安、現地の厳戒態勢、そして出発直前の3月20日には宮城県沖を震源とする最大震度5強の地震も発生……。ほかの選手もそうだろうが、羽生選手にとってこの世界選手権が、万全の状態で臨める大会でなかったことは確かだ。
「羽生選手は、そんな中でも“自分ができることをきっちりやろう”という意図をもって大会に出場しました。最大の目的は、北京五輪での日本人選手の出場枠“3”を確保すること。彼の成績で、枠の数が決まるので、今回は確実性を優先して、ずっと練習してきた4回転アクセルを封印したのかもしれません」(フィギュア関係者)
しかし、ライバルと目されるネーサン・チェン選手はまだしも、鍵山優真選手に敗れたことは、日本のみならず世界に大きな衝撃を与えた。フィギュアスケート解説者の佐野稔さんは鍵山選手をこう評価する。
「自分が滑る直前にチェン選手が220点という高得点を出しても、“チェン選手がいいことはわかっていたので、何とも思わなかった”と平然と言ったところに、17才とは思えない器の大きさを感じました。非常に潜在能力が高く、これからのフィギュア日本男子を背負っていく選手であることは間違いありません」
並の選手なら、鍵山選手のような年下のライバルの出現に心穏やかではいられないだろう。だが、羽生選手のメンタリティーは“常人”とはまったく違うという。
「世界選手権の表彰式の後も、スケート靴のブレードにカバーをつける鍵山選手の体を、羽生選手が支えてあげていた。彼は本当に後輩思いだし、ほかの選手の活躍や成長を祝福できる心の持ち主なんです。