開幕2カードを終えたプロ野球で、パ・リーグは比較的、各チームが戦前予想通りのスタートを切った印象だが、セ・リーグは早くも異変の匂いが漂っている。開幕3連勝でオープン戦「優勝」が実力だったことを示したかに見えた阪神は、その後は広島に連敗。かたや優勝候補筆頭の巨人は、2試合連続の引き分けで「勝ち切る野球」に課題が露呈した。
巨人については、今シーズンの「9回打ち切りルール」の影響が大きい。延長戦がないと決まっていれば、各球団とも終盤には「勝利の方程式」を惜しみなくつぎ込んでくるから、なかなか点を奪えない。巨人の得点力は必ずしも低くはないが、シーズン緒戦では「ほしいところ」で点を取れない展開が目に付いた。
野球評論家の江本孟紀氏は、新ルールがどのチームに有利になるか、まだ結論は見えていないと語る。
「ピッチャーをどんどんつぎ込むから、選手層の厚いところが有利だと言われることも多いですが、逆の見方も成り立ちます。必ず9回で終わるのだから、選手層の薄いチームでも互角に戦える可能性もあります。先行逃げ切りの野球になる、仕掛けが早くなるというのはあるでしょうが、いずれにしてもベンチワークが勝敗を分けることになりますね。
12球団を見渡しても、戦力的にはっきり優位といえるのはソフトバンクくらいで、他の11球団の戦力差はそんなにありません。連続引き分けを経験した巨人を含め、どのチームも1点を確実に取る野球ができていないし、1点を守り切ることもできていない。7、8、9回を投げるピッチャーが決まっているチームが強いというが、そこに頼りすぎれば登板過多になる。その時に調子のいいリリーフをうまく使っていくことが大事です」
昨年もコロナ禍で延長は10回だけに制限されていたが、わずか1イニングの短縮で、戦い方は大きく変わっているようだ。ちなみに昨シーズン、1イニング限りの延長戦に突入した試合で巨人は1敗8分けだった。「どうしてもほしい1点」に届かない弱点は、実は独走優勝した昨シーズンから変わっていない。