「東大卒」のブランドは今も圧倒的だが、東大生を取り巻く環境は大きく変化しているという。就職先にも大きな変化が見られる。
2005年は「みずほフィナンシャルグループ」を筆頭に「日立製作所」「NTT」「トヨタ」など国内の大企業が名を連ねたが、2020年は母校の「東京大学」が首位になり、「アクセンチュア」「PwCコンサルティング」といった外資系コンサル、「楽天」などのIT企業が目立つようになった(※「大学通信」調べ)。
「東京大学」がトップになったのは、研究職などとして東大に就職する人数が、大学当局による就職先の統計に含まれるようになったからだ。
「その他に増加が目立つ総合商社は外資系コンサルと同様、東大卒は入社時から幹部候補生になりやすく、民間企業のなかでは年収が高い。近年は弁護士や公認会計士などの専門職に就いたり、起業する東大生も増えています」(大学ジャーナリストの石渡嶺司氏)
ただし、民間企業で東大卒が苦境に陥るケースも枚挙にいとまがない。
東大法学部を卒業後、メガバンクに就職した30代のA氏は、入行後のペーパー試験では好成績を連発していた。だが対人コミュニケーション能力の弱さから営業成績が振るわず、上司から叱責される日々が続いた。
さらにA氏を苦しめたのは「東大卒いじめ」だったという。東大卒ライター・池田渓氏(2002年入学、理II)が説明する。
「Aさんが特に陰湿だと感じたのが、東大を敵視する慶應義塾大学卒の先輩で、業務で話しかけても無視され、目が合うたびに露骨に舌打ちされたそうです。さらに名前ではなく『東大生』と呼ばれ、わずかなミスでも他の同僚の前で何時間も叱責された。これで精神を病んだAさんは、うつ病の診断を下されて半年間の休職を余儀なくされました」