たとえば女性がひとりで焼肉店に行く──ひと昔前なら、「孤独な人」「かわいそうな人」「変わった人」というレッテルがはられたものだ。それ以前に、「恥ずかしくてそんなことできない」と思う女性が多く、そうしたひとり客を断る店すらあった。
実際、17年前に記者がひとりで旅行をし、とある老舗旅館に泊まったところ、2時間おきに女将が心配して様子を見に来た。当時、「旅館にひとりで泊まる女性は自殺旅行などの訳アリだと思われる」などといわれていたから、そのせいだろう。旅館の宿泊料金も1部屋2人料金が多く、1人料金はほとんど設定されていなかった。
しかしいまは違う。あえてひとりであそぶためのレストランや旅館、レジャー施設が増え、おひとりさまでさまざまなレジャーを満喫する「ソロ活」なる言葉も誕生。ソロキャンプ、ソロ焼肉、ソロカラオケ……そんなあそび方が話題となり、ひとりあそびはもはや“大人のたしなみ”に昇格した。
そしてこの潮流は、皮肉にもコロナ禍によって加速している。
好きなことを好きなときにできる自由さ
おひとりさまをテーマにした著書を数多く持つエッセイストの葉石かおりさんは、こういったソロ活の魅力についてこう語る。
「興味があることを、自分の好きな時間に、自分のペースで、誰に気兼ねすることなくできることが楽しいんです」
葉石さんは既婚者だが、仕事の都合上、1年の半分を夫の暮らす京都で、もう半分を東京でひとり、過ごしている。
「家族と過ごす時間ももちろん大切ですが、それぞれが好きなことを好きなときに楽しむ“自由時間”を持つ、というのは、大切なことだと思います。私たち夫婦はお互いに、自分だけの時間を尊重しています。だからこそ、ふたりでいるときも会話が新鮮。心地よい距離感を保っていられます」(葉石さん・以下同)