親になり子供が学齢に達すると、「自分が子供の頃といろいろ違うなあ」とジェネレーション・ギャップを感じる保護者は多い。子供と30歳の差があれば、同じ学年で自分が経験したことは30年前の常識だ。違うのが当然と言えば当然だが、そうした変化は必ずしも「進化」ではないこともある。例えば、事故を恐れて次々と遊具が減っていることや、近隣からのクレームがあるからとチャイムを廃止したり、土の校庭を舗装してしまうなどは、子供のためになっているか疑問も感じるところだろう。
『週刊ポスト』(4月5日発売号)では、「令和の学校から消えたもの」を特集している。遊具では、ブランコやシーソー、回旋塔などが消えつつあり、理科の実験で必ずお目にかかったアルコールランプやマッチも「危険だ」としてあまり使われなくなっている。
そうした変化のなかで、親世代が驚くもののひとつが「家庭訪問」だ。最近の学校では、家庭訪問そのものをしないところも多い。共働き家庭が多くて現実的に難しいということもあるし、教師だとしても家に入れたくない、家の中を見られたくないという保護者も増えている。希望する家庭だけ実施しているという学校もある。地方の中学校に勤めるベテラン教員が語る。
「今いる中学校は家庭訪問をしていますが、隣の中学校はやめましたね。うちでもやめようという声はあります。理由はいろいろありますが、家庭訪問をやると、その期間は4時間授業とかにせざるを得なくなる。子供にしっかり勉強を、と言っているのにそれはどうなのかという意見がひとつ。あと、共働き家庭だと、学校側が決めた時間に家にいなければならないことを嫌がるケースもある。残念ながら、今のご時世では先生という存在があまり親から信頼されていない。先生と話しても意味ないという親御さんも増えているし、そういうなかで家庭訪問をしたくないという先生も少なくない」
家庭訪問を実施している学校でも、玄関先で済ませるのが令和の常識で、お茶やお菓子をもらうことを禁止している学校も多い。特定の家庭と親しい関係にあると噂されたり、親同士が「先生接待」を競うようなトラブルを避けたいからだ。ただし、前出のベテラン教員は家庭訪問の意義も訴える。
「私は生活指導主事という立場だったことが長いので特にそう感じるのかもしれませんが、家庭訪問はすごく大事です。家庭の様子、親御さんの人柄を知って、保護者とすぐに話ができる関係を作っておくと、生徒に何かあった時にスムーズに対処できます。もしものケースがなければ無駄になるかもしれませんが、保護者と教師が信頼を築く機会は今後もあったほうがいいと思います。ただ、プライバシーへの配慮も重視されるなかで、家庭の込み入った事情に踏み込んだ話はしにくいことも悩みです」