「あなたがウイルスを持ちこんだ!」、「近寄らないで!」……。新型コロナウイルス感染や死の恐怖から、いままで仲がよかったお隣さんが豹変する──。そんなことが起きているというのだ。
特に、都会と比べて人とのつきあいが密接な地方では、感染情報が広まるのが早いという。感染者に起きた、新型コロナウイルスの本当の恐怖は、人間関係にこそあったのだ。新潟県在住の60代主婦が心配そうな顔でつぶやく。
「3月16日まで感染者数が1桁だったので安心していたら、最近は大衆酒場や病院などでクラスターが発生し、感染者が急増して2桁になりました。それなのに県内では、飲食業を支援する『Go To イート』の食事券や県内限定の宿泊券が販売され、温泉やレストランが賑わっています。いずれ感染爆発が起こるのではと不安でなりません」
首都圏などの緊急事態宣言は解除されたが、専門家が危険視するのは地方だ。
「地方都市の(感染者の)急増は非常に心配。病床を確保しようとしているが限界がある」
3月24日の定例会見でそう警鐘を鳴らしたのは、日本医師会の中川俊男会長だ。実際に福島県、新潟県、滋賀県、愛媛県などでは新規感染者が第3波のピークに迫り、愛媛県の中村時広知事は3月25日、「第4波に入った」と明言した。
第3波までは東京都など大都会が感染拡大の中心だったが、これから地方を襲うと予想される第4波で本当に懸念されるのは、感染者や重症者の増加ではなく、エスカレートする「コロナ差別」だ。
東京都などの都市部は感染者の実数は多いが、それ以上に人口が多く、感染しても誰が誰にうつしたかが判明しづらく、感染経路がたどれない。ところが地方は人口が少ないため誰がどのように感染したかを追いやすいうえ、これまでの感染経験が少なく、感染者に厳しい目が向けられやすいという。
「しかも最近は、感染者のSNSなどが特定されて、『こいつが陽性者です』とネット上で拡散されるケースが後を絶ちません。実際に地方では、中世ヨーロッパの魔女狩りのごとく『コロナ狩り』ともいえる深刻な事態が起きています」(全国紙社会部記者)