菅義偉・首相と安倍晋三・前首相は3月29日に、ほぼ半年ぶりに会談し、菅首相は「内政、外交について意見交換した。非常に有意義だった」と語った。「桜を見る会」をめぐる捜査で政治活動を制限されてきた安倍氏だが、首相との会談を行ったことで、「政権への影響力は健在」とアピールすることとなった。
そんな安倍氏は、このところ国内、海外で存在感を増している。
国際的には、3月22日にホロコースト生存者で人権活動家のラビ・シュナイアー氏が設立した米国のユダヤ系財団「アピール・オブ・コンサイエンス財団」から「ワールド・ステーツマン賞(世界政治家賞)」を贈られた。
過去の受賞者は英国のサッチャー首相や旧ソ連のゴルバチョフ大統領、ドイツのメルケル首相など大物ばかりで、米国のバイデン大統領は安倍氏の受賞に直ちに祝辞を送ってきた。
国際的な知名度がほとんどない菅首相はバイデン大統領との首脳会談が外交デビューだ。その直前の安倍氏の受賞は、菅首相との「国際社会での格の違い」を見せつけることになった。
安倍氏は国内でも積極的に動き出した。受賞2日後の3月24日には、会長を務める自民党の「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」の会合に出席し、コロナ禍の経済対策について「まだ財政出動の余地はある」「増税という議論をするだけで萎える」と欧米のような積極財政を続けることを主張し、国民への「10万円給付金」の再支給に否定的な菅首相とのスタンスの違いを示した。
安全保障面でも、自民党新潟県連の会合(3月27日)で講演し、「今、中国が一方的な現状変更を行なう中で、日本を含むインド太平洋地域がフロントライン(最前線)になっているとの認識、覚悟で、外交安全保障政策に取り組む必要がある」と訴えた。
「安倍さんが一番心配しているのは菅政権の安全保障政策の弱さ。中国が尖閣諸島での領海侵犯を繰り返しているのに、親中派の二階俊博・幹事長に遠慮して中国に強い姿勢に出ることができないことに相当危機感を持っている」(側近議員)
さらにこの先も、安倍氏は4月22日に開催される夕刊フジ主催「日本国憲法のあり方を考えるシンポジウム3」に特別参加することが発表された。